FC2ブログ
--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2013/07/17

No.1をめざせ その4

恐怖の打ち合わせ。……への道のりその2。
ショータローを書くのは新鮮であります。



「ったく。誰が聞いているかわかんねーところでその呼び方はやめろっつーの!」
不遜な態度で座っていたショータローは、のそりと立ち上がってキョーコの前に立つ。
「まさかこんなところで会う日が来るとはな」
「私もこんなことになるとは思ってなかったわよ!」
ふんっ、とキョーコはそっぽを向く。

「だろうなぁ。ついこの間までは地味でダッセェ格好してバイトばっかりしてたやつが、まさかこんなところに来られるようになるとは夢にも思わなかったぜ」
ああ、今でもまだ地味でダッセェけどな。とショータローは付け加える。
「うるさいわね!新人らしく控えめな格好を選んだって言って貰いたいわ!」
ショータローのあおりにキョーコは見事に反応してしまう。
ぐるりと振り返ったキョーコにショータローはしたり顔。その表情は「本当に単純なヤツ」と雄弁に物語っている。
キョーコは頭に血が昇りかけたが、ぶんぶんと頭を振る。これ以上この話題を続けてもきっと利はないと判断して、話題を変える。
「っ!っていうか、なんでアンタがこんな企画に出るのよ」
「ああ?」
「ミュージシャンとしてNo.1って言われてるなら、わざわざこの企画に参加する必要はないんじゃないの?」

そう、共演は昔から嫌っている敦賀さんだし、料理の出来ないアンタがこんな企画に参加するなんて。
あちこちひっぱりだこなアンタなら仕事も選べるでしょうに。
そう思ってキョーコは尋ねたのだが、ショータローからは意外な答えが返ってきた。

「この企画を蹴れるヤツがいたら、タダのバカだな」
「へ?」
「フジの24時間テレビに穴をあけるような人間は、今後この業界で生きていけないと覚悟を決めなきゃならねーレベルなんだぞ」
「え……」
幾つかあるテレビ局の中でも、フジは最大手の1つだ。
その24時間テレビとなれば局の力の入れ方も他のレギュラー番組とは格が違う。もちろん、世間の注目度もだ。
その注目番組(しかもゴールデン枠)の仕事を断るとなると、業界の評価は一気に下がるだろう。
「そもそも、有名どころはフジの24時間テレビの日はその日のいつ、どの番組に呼ばれても大丈夫なようにスケジュールを調整してあるモンなんだよ」
「うそ……」
「お前は知らないことだろーがな!あの敦賀蓮だって、そうしてあるはずだぞ。でないと俺とあいつが同じ番組に出るなんて不可能だ」
キョーコは指摘を受けて初めて気がつく。ひっぱりだこの2人がたまたまスケジュールに空きがあるなんてありえないのだ。
そして、自分はその企画を断れるものなら断ろうとしていたことを。
もし断っていたら……キョーコは青ざめる。
ショータローはキョーコのその表情の変化を見逃してはいなかった。

「まさかお前、この話を断ろうとしてたとか?」
びくりと思わず肩をふるわせてしまうキョーコ。ショータローはまた、質の悪い笑みを浮かべた。
「さっすがド新人!業界の事なんざ分かっちゃいねぇな!嫌々ながら受けて、首の皮一枚繋がったってところか」
「っ!うるさいっ!」
にやにや笑うショータローは、まるで小学生男子のよう。
テレビの前ではもちろん、格好つけのショータローならば人の目があるところでは決してしない表情だろうになんとうかつな。
かちんと来ていた割には冷静な判断が出来たキョーコは、本来ならここで諫めるはずの人物がいないことに気が付く。

「そういえばアンタ、祥子さんはどうしたのよ?」
ショータローのマネージャーの祥子は、お姉さん的存在だ。仕事だけではなく、プライベートでも深い関係にある彼女は、普段からショータローの言動には気を遣っている。
出会った時にショータロー本人が言ったとおり、ここはいつ誰がとおってもおかしくない場所だ。
そんな場所で素をさらしているとなれば、必ず彼女なら諫めるはずなのだ。
「あ?祥子さん?祥子さんなら忘れ物したから、地下の駐車場に取りに戻ってんだよ」
だから会議室にも行かずにこんなところで時間をつぶしていたというのか。そこへうっかり飛び込んでしまった自分の不運を、キョーコは呪った。
「で、そのド新人さんは、番組で何をやらかすつもりなんだよ?」
「何、って。何もしないわよ!」
「俺に復讐するんだろ?」
「もちろんよ!でも番組でどうこうしようって気はないわ!仕事は仕事だもの」
「どーだか。1度やりかけたんじゃねーの?」
「っ……」
『やっぱきまぐれロック』の第1回目の坊のことをほのめかしているのだろうか。
キョーコは一瞬怯みそうになったが、坊のことは極秘にしてもらっているし、1回目に出ただけのショータローに自分のことがばれているとは思えない。
きっとこれは鎌をかけただけに違いないとふんで、キョーコは気をとりなおす。
「そりゃあ失敗はしたことはあるけど、故意にそんなことはしないわ。今回は24時間テレビだし。敦賀さんにも迷惑をかけるような真似はしたくないし」
そしてあえて敦賀蓮の名前を出す。キョーコの狙い通り、ショータローは反応する。
「敦賀蓮に迷惑をかけない為だと?」
「ええ、敦賀さんは大事な事務所の先輩ですもの。後輩のせいでイメージダウンなんてことになったら大変でしょ」
「俺だったらかまわねーってのか?」
「さぁ?」
敦賀蓮の名前を出したことで、ショータローから余裕の笑みが消えた。
キョーコはしてやったりと内心、高笑い。一気に形成逆転とばかりに続ける。
「それよりアンタ、自分の心配しなくていいわけ?」
「何だと?」
「だってお料理対決なのよ?アンタ、まともに料理したことあるわけ?私の記憶じゃ小学生くらいまでは厨房に入っていた気がするけど、それ以降は全然なんじゃないの?」
「うっ……」
「そうよねー。こっちに来てからだって私に任せきりだったしねー。あとは外食とか祥子さんに頼りっきりなんでしょ?そんなんで大丈夫なわけ?」
「俺にできねーことなんてねーよ!」
「そうかしらー?」
昔から、極力苦手なことは避けていた。避けて通れないところはキョーコが代わりにやっていたことも少なくはないのだ。
もちろんそれを周囲が気づくことも無かったのだけれど。
それをほのめかす言に、流石にショータローもばつが悪そうな顔をした。だが、それは一瞬ですぐに反撃に転じる。

「つーかお前もお前だよな!リクエストがハンバーグなんて」
「なっ!ハンバーグのどこがいけないのよ!」
「ガキの頃からちっとも変わってねーってことだよ」
「好きなものを好きなままで何が悪いってのよ!」
「そんなんだから、いつまでもガキくさくて色気もねーままなんだよ」
「何ですってー!」

投げれば即返る、言葉の応酬。
2人はそれに夢中になり、背後のエレベーターの到着音に気づかなかった。
「そもそもハンバーグにしたんだって好きだからって理由だけじゃないんだからね!」
「はんっ!なんだその言い訳は!」
「……ずいぶん、楽しそうだね」
「「え?」」
突然、冷ややかな声がかかったので2人は同時に会話を止め、エレベーターの方を振り返った。
「会話を止めるのも振り返るタイミングも一緒なんて、ずいぶん仲がいいみたいだね」

そこに立っていたのは、きゅらきゅらと極上スマイルを顔面に貼り付けた人気No.1俳優、敦賀蓮。
その後ろに青ざめた蓮のマネージャーの社倖人と、苦虫をかみつぶしたような表情のショータローのマネージャーの安芸祥子。

「敦賀さん……」
「敦賀蓮……」
青ざめるキョーコと嫌な顔を隠しもしないショータローに、蓮はまた極上のスマイルを向けた。
「誰がいつ何時通るか分からない場所で騒ぐのはどうかと思うよ?」
「は、はい……」
さっきのショータローとやりとりをしていた勢いはどこへやら。蓮の極上スマイルの裏にあるどす黒いオーラを感じて、キョーコは小さくなる。
「それにもうすぐで打ち合わせが始まる時間だよ?きっとスタッフたちは早くから準備しているだろうから、俺たちも行けるなら早く行かないとね」
「はい……」
「ああ、それから不破君」
「ああ?」
「今日はよろしくね?」
にっこり笑って蓮はショータローに握手を求める。
ショータローは一瞬顔をしかめたが、すぐに笑顔を作った。
「こちらこそ、よろしくお願いします。敦賀蓮さん」

にこやかな表情で握手を交わしているはずなのに。
底には得体の知れない黒い渦のようなものが見えて。
キョーコは本当に番組が、むしろこの打ち合わせから大丈夫だろうかと背筋が凍る思いだった。



スキビ☆ランキング
関連記事
完結:No.1をめざせ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。