FC2ブログ
--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2013/07/11

No.1をめざせ その3

3話目。
恐怖の打ち合わせへの道のり。



キョーコの24時間テレビのゴールデン枠への出演が(強制的に)決まってから2週間後。
フジTVのビルの1階のエレベーターホールに、とてつもなく沈んだ顔のキョーコが佇んでいた。
キョーコが呼ばれている打ち合わせは、8時半から。打ち合わせとしては非常に早い時間である。
それはひとえに、No.1俳優と、No.1ミュージシャンのスケジュールを考慮したためだろう。
もともと早い打ち合わせの時間。それより少し早い時間であることもあり、現在、エレベーターホールにはキョーコ1人。
キョーコは先ほどから、目の前のエレベーターのボタンが押せないままだった。

今日は、24時間テレビの様々な企画の打ち合わせが行われることになっている。
総合司会など複数の企画に出演する者に配慮して、ほとんどの企画の打ち合わせが今日一日で行われるのだ。
本番さながら、芸能人の出入りが多い日と言えるだろう。
キョーコが出演する「No.1をめざせ」もそのうちの1つで、プロデューサーから出演者に企画の詳細が伝えられることになっていた。
その後には、番組PRのための出演者の一言コメントの収録が予定されている。

「はあああ~」
キョーコの口からは溜息しか出ない。
今日だけでもう数え切れないくらいの溜息をついたころに、背中をばしっと叩かれた。
「いったーい!」
キョーコが振り返ると、そこにいたのはラブミー部員2号こと琴南奏江。
「ひどいじゃない、モー子さん!」
「アンタが辛気くさい溜息ばっかりついてるからでしょう?それにその妙な呼び方、やめてくれない?」
奏江はすっぱり言い捨てると、さっとキョーコを追い抜きエレベーターのボタンを押す。
奏江もまた、キョーコが出演する番組の直前に放送される企画への出演が決まっているのだ。
24時間テレビ放送の翌日に、「水森都シリーズ」の最新作が放送される。
それのPRもかねて、飛鷹や他の共演者たちとクイズ番組に出演するのだ。その打ち合わせのために来ているのである。

「だってー……」
キョーコは両手の人差し指を向かい合わせてくるくるまわしていじけるそぶりをみせると、今度は奏江が溜息をついた。
「アンタねぇ……いくら番組に出るのは気が重いからって、いつまでもうじうじしないでよね!」
出演が決まった直後、キョーコからいかにこの番組への出演が恐ろしいものかをとくと聞かされた奏江は、キョーコが溜息をつく原因も全て分かっている。
不破とキョーコの昔の関係も、不破と敦賀蓮との仲がよろしくないことも、全て聞いて知っている。それに、坊のことも。
キョーコが狼藉を働いたあの時には、奏江もその場にいたのだ。(元をたどれば、奏江がキョーコに坊を押しつけたのだが)
「椹さんも坊のことは口外しないように、って言ってくれてるんでしょ?」
「でもぉ~」
「うじうじ言ってせっかくのチャンスを逃す気?」
奏江の言うとおり、これはデビューしたてのペーペータレント(しかもラブミー部=補欠扱い)には、ありがたすぎる話なのだ。
奏江の言うことは分かる。ショータローと同じ舞台に上がれるなんて、これ以上ないチャンスだ。
けれども。
「そんなこと言ったって……企画内容が悪すぎるのよ……あの2人にまともなものが作れるわけがないのよ……」
キョーコはまた、蓮の「マウイオムライス」を思い出す。
ショータローに至っては、思い出すほどの料理がないのが実際だ。
気が重い、どころの話ではない。

「助けてよー。モー子さぁん……」
キョーコは奏江にすがりつくが、奏江はあっさりその手を振り払う。
「だーもう!いい加減にしなさい!アンタだってそれなりの覚悟を決めたからあんな荷物を持ち込んで今日ここにやってきたんでしょ?」
「それはそう、なんだけど……」
「だったらとっとと腹括りなさい!いくら仲が悪くたってあの2人もそれぞれのの業界No.1と言われるプロなのよ。ちゃんと仕事はするに決まってるじゃない」
「そう、だといいんだけど」
歯切れの悪いキョーコに奏江は顔をしかめたが、ちょうどその時、エレベーターの到着を知らせる音がホールに響いた。
「ほら、行くわよ。この話はもう終わり!」
エレベーターのドアが開くと、数人の芸能人やマネージャーが乗っていた。
さすがに人がいるときに話す内容ではないとキョーコは諦めて、奏江に続いてエレベーターに乗り込んだ。

「それじゃあ、アンタもがんばんなさい」
一応の応援をくれて、奏江はキョーコが向かう会議室の1つ下の階で降りてしまった。
扉の閉まる音に紛れて、キョーコはこっそりとまた、溜息をつく。

ほどなく、キョーコの降りる階に到着する。
どうやら降りるのはキョーコだけのようだ。
扉の前に立ち、開くのを待ちながら深呼吸をする。

(そう、モー子さんの言うとおり、これは大きなチャンスなのよ!敦賀さんだってショータローだってそれぞれの分野での「No.1」として出るんだもの!プロとしてちゃんと仕事をしてくれるわよ!私が気にすることなんてないわ!)
そう自分に言い聞かせて、よしっ、と気合いを入れたところで扉が開く。
(会議室で何があろうと動揺なんてしないわ!私だって役者のはしくれですもの!)
エレベーターから一歩踏み出す。
さぁ奥の会議室まで一気に行くわよ!とキョーコはエレベーターホールを颯爽と抜けようとしたのだが。

「打ち合わせまでまだ時間があるんじゃねーのか?そんなに急いでどこまで行くつもりだ?」
横から声がかかった。
エレベーターから降りたのはキョーコ1人だ。この声は明らかにキョーコに向けてかけられたもの。

聞き覚えのある声に、キョーコはぴたりと足を止めてそちらを見た。
「よぉ。久しぶりだな」
エレベーターホールの隅に置かれた1人がけのソファにふんぞり返って座っていたのは、キョーコが予想した通りの人物であった。
「ショータロー……」

No.1ミュージシャンであり、キョーコの敵。
不破尚だった。




スキビ☆ランキング
関連記事
完結:No.1をめざせ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。