2015/06/21

父の日。

「一番好きな父親キャラは?」と言われたらクーパパだよな、ということで小話を。
前にも似たようなものを書いたけど、一応。
「思い立ったら72時間以内」を実行してみた。





ようやく眠りについた頃。
ベッドサイドに置いていた携帯が、着信を告げるにぎやかなメロディを奏で始める。
「……ったく、何だこんな時間にぃ……」
プライベート用の携帯が鳴らされるということは、何かあったのかもしれない。
ローリィは眠い目をこすりつつ、携帯を手に取り着信元を確認しないままに通話ボタンを押す。

「何かあ「ボス――――――――――!!」」
ただ一言「何かあったのか」と尋ねる間もなく、相手からの絶叫が聞こえた。
電話越しにもかかわらず大きい声が耳に突き刺さり、ローリィは耳を押さえる。眠気も一気に吹き飛んだ。
ごほん、と一度咳払いをしてから携帯を耳から離し、ローリィは未だ興奮したままで電話の向こうで何やら騒いでいる相手に問いかける。
「こんな夜中に一体何の用事だ、クーよ」
このハイテンションに先ほどちらりと聞こえた「プレゼント」という単語から、何となく話の中身は想像できたのだが、あえて尋ねるとクーはまだテンションが高いまま、何やらまくしたてる。
「……落ち着け。でないと切って電源も落とすぞ?」
「そっ!それは!待ってくれ」
慌てた様子のクーに、ローリィは声を出さず笑う。

「で、一体何の用だ?」
ややあってからもう一度尋ねると、先ほどよりずいぶんと落ち着いた声が返ってくる。
「実は……キョーコに連絡をとりたくてな」
「最上君にか」
「ああ……実は今日、荷物が届いて」
ああやはりな、とローリィはにやりと笑う。
「父の日だからな?」
「そう!最初は一体何事かと思った!誕生日でもなければ何の記念日でもないのに突然キョーコから荷物が届いて!それはそれはセンスのいいハンカチが入っていて、「おとうさんへ。よかったら使ってください」と一言だけ控えめにカードにかかれていたんだ!!」
話すうちにクーのテンションはどんどん上がっていく。耳元に持ってきていた携帯を、ローリィは再び5センチほど話す。
電話越しではそんなローリィの様子など伝わるわけがなく、クーは話を続ける。
「暫く考えてから、日本では父の日とやらがあったのを思い出したんだ。キョーコが私を父だと思ってプレゼントを送ってくれるなんてこれ以上の喜びはないじゃないかーーーーーーー!」

電話の向こうではガッツポーズをしているんだろうな、とクーの姿が安易に想像できたローリィは、くっ、と小さく笑いをもらす。
「実はな、クー」
「何だ?」
「最上君は下宿先の大将に日頃の感謝を込めてプレゼントを買いに行ったらしい。その時にお前に似合いそうなハンカチを見つけてつい購入してしまったそうだ」
「なんと!」
「帰宅してからどうしたものかと悩んで、俺に相談してきたんだ。それなら大喜びするに違いないから送り付けてやれ、と住所を教えてやったんだよ。最上君は父と呼べる人が今までいなくて、プレゼントをするなんて……とずいぶんとためらっていたが、ちゃんと父の日に合わせてつくように送ったんだな、さすがだな」
ローリィは、ローリィだけが知っている情報をクーに伝えるが、クーの反応はない。
「どうした、クー?」
「ボス……」

小さな声で呼ばれたために、ローリィは携帯を再び耳に近づける。
しかしそれは大間違いで。
「ボスーーーーー!私は今すぐこの感動をキョーコに伝えたい!彼女が初めてプレゼントをした「父」が私だなんて!この感動を今すぐ伝えずしていつ伝えるというんだ!さあボス、連絡先を教えてくれ!!」
再び大きな声が、ローリィの耳をつんざく。
余りの衝撃にしばらく耳を押さえてから、ローリィは大声で返す。
「おまえはバカか!今何時だと思ってる!こっちは夜中だ!こんな時間にお前がテンションの高い電話なんかしたら、いい迷惑だろう!」
「そ、そうか……」
ローリィにとっても迷惑極まりなかったのだが、クーがしゅん、となってしまったので言いそびれる。
ちょっときつかったか?ローリィは少しばかりクーの反応を待つが、クーは黙ったままだ。
「まあ、最上君には私からお礼の電話があったと伝えて「ボス!!」」

またまたローリィが最後まで言わないうちに、クーの声が被せられる。
「それならば今から私がそっちに行ってこの感動をキョーコに伝えればいいんじゃないか!」
「は?お前が日本に来るってのか?お前、仕事は?」
「大丈夫だ!さっきスケジュールを確認したら、今すぐこっちを立ってキョーコに会ってすぐ戻れば仕事に穴はあけずに済むぞ」
得意気に言うクーに、ローリィは深いため息をつく。さっきの沈黙は、落ち込んだのではなくスケジュールの確認だったのか、と。
「お前……最上君のスケジュールは丸無視する気だな。最上君だって、明日もドラマの仕事が入ってるんだ」
「なに!ドラマ!それならばぜひ仕事っぷりを見せてもらおうじゃないか」
「アホか!!お前が突然現れたりしたら、大騒ぎになって最上君が撮影どころじゃなくなるだろう!」
「大丈夫だ!お忍びだからな!」
「忍びだろうがお前は目立つだろうが!それに、最上君の姿を見たらお前、絶対暴走するだろう!お忍びでなんていられるわけがないだろう」
「う……それはそうかもしれないが!わたしは!この感動をキョーコに伝えたいんだ!」
「だからそれは俺が請け負ってやるから。お前は大人しくしていろ」
「何だと!初めてかもしれない海を越えた親子交流をボスは邪魔しようとするのか!」
「そういう問題じゃない!!」

こうして……
ローリィとクーの、実にくだらない口論は空が白み始めるまで続いたのであった。

【END】
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キョーコちゃんがプレゼントなんてしたら、きっとこうなるだろうなと。
そして数年後、蓮さんがキョーコちゃんと一緒に母国に帰った暁には「お前からは何もなかった」とか拗ねればいいんだ。
そんでもってその時に「キョーコのはじめてはわたしだからな」とかややこしいことを言っちゃって、蓮さんが嫉妬魔人になってしまえばいいのだ!とかどうでもいい派生ネタを考えたのでありました。

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