2015/04/05

くすしとめいおう。③


花とゆめで連載中の『コレットは死ぬことにした』。
コレットさんとハデスさんをキョーコさんと蓮さんが演じたら、というお話の続き。
完全浅得なお話ですが何かーーーー!

ちなみに、以前の落書きの時にちょろっと書いた小話とは関係がございません。
何でもこいやー!な方のみどうぞ。





監督の思い付きにより、追加撮影に臨むことになったキョーコと蓮。
閨(ねや)で寝ているハデスがなかなか素直に治療を受けようとしないために、コレットが閨に乗り込みハデスに馬乗りになって服を剥いで薬を塗る、というシーンだ。

「その体勢からスタートするのかな?」
ハデスの閨で寝そべってスタンバイする蓮が尋ねるのも当然。
キョーコは蓮の腰のあたりをまたいで仁王立ちしているのだ。
別に必要とされているわけではないのだが、何とも色気がない構図である。

「これから撮るシーンでは、コレットはハデスに乗っかってるんじゃなかったかな?」
「それはそうですけど……」
蓮の質問に、キョーコは視線を泳がせながらしどろもどろ答える。
蓮はふうと軽く息を吐いた。
「これじゃあ、いたずらした後で隠れてたのに母親に見つかって追いつめられている子どもみたいじゃないか」
「すっごく例えが具体的ですけど……敦賀さん、そういう経験があるんですか?」
「いや。前にドラマでそういうシーンを見たからね」
「そうなんですか。でもある意味、それってあながち外していない例えですよね」
「どういう意味かな?」
「だってハデスはコレットの治療を素直に受けないんですよね?だだっ子と変わらないじゃないですか。治療を拒否したところを捕まって追いつめられているのも大差ありませんよ」
「なかなか言うね、君も」
「コレットもきっとそう言うと思いますよ」

仁王立ちしたキョーコが蓮を見下ろしたまま続けられる会話。
スタッフたちは何事かとちらちらと横目に2人を見ながら、撮影の準備をしていた。
「それで?話を戻すけど、どうしてこの体勢なのかな?」
「敦賀さんの上に乗ってスタンバイするなんて!そんな失礼な真似はできませんから!」
今度は腕組みまでプラスして言うキョーコに、蓮はため息をつく。
「あのね……俺は君に乗られてへたれるほど、弱いわけじゃないよ。一応鍛えているしね」
「いえ、鍛えているとか鍛えていないとかそういう問題じゃありません!偉大な先輩の上に乗るなんて失礼な真似は必要最低限であるべきなんです!」
言い切るキョーコに、蓮は内心深いため息をつく。「君に乗られるなら大歓迎なのに」と。

「とにかく!始まったらちゃんとしますから!」
「はいはい、分かったよ」
この状態のキョーコに何を言っても聞かないだろうと判断した蓮。
そういえば以前にも同じセリフをきいたような気がするなと思いながら頷いたその時、監督から声がかかる。

「おーい、敦賀君、京子ちゃん。そろそろ始めるけどいいかな?」
「はい」
「大丈夫です」
キョーコと蓮が返事をすると、監督は大きく頷いてスタッフに指示を出す。
「それじゃあ、始めます!5、4……」
カウントダウン開始とともに、キョーコは眼を閉じる。
(私は薬師のコレット。聞き分けのない患者を治療しに来たのよ)
すぅっ、と息を吸ってそのまますとん、と蓮の腹部をまたいで閨に膝をつく。
「3、2、1……」
かちん、とカチンコの音が鳴ると同時に、キョーコは眼を開いた。

『往診に参りましたー!』
元気な声にハデスが目をあけると、眼前にはコレットの顔。
手はハデスの上着を脱がせようと掴んでいる。
『追いはぎか、お前は』
ハデスは服を掴むコレットの手を振りほどこうとするが、離れない。
『不愉快だ』
怒りを込めて低い声で脅しても、コレットは意に介さない。
『素直に薬を塗らせてくれないからですよ。私のこと、歓迎してくれたんじゃないですか?』
むっとしたまま答えないハデス。
それならばとコレットは服を握る手に力を込めて……
『ほら、お腹見せてくださいーっ』
ハデスの上に座り、がばーっとハデスの服をめくりあげた。

(……っ……)
服をめくりあげて現れたのは、たくましい腹筋。
赤くはれ上がり、発疹が出ているように見えるメイクを施されているが、この鍛え上げられた体は。
(つるが、さん……)

心の中で名を呼んでしまったが最後。
キョーコの中から、すこん、とコレットが抜けてしまった。
自分が直に触れているのは、尊敬する先輩俳優だとはっきりの認識してしまった。
そして、その先輩の服を自分からはぎ取ったとは何とも破廉恥な!
キョーコの顔には熱がこもり始めるのだが……

(ちょっと待って。この体制って前に……)
キョーコは以前にも同じような体勢になってしまったことを思い出す。
そう、カインとセツカとして過ごした、あの夜を。

様子のおかしかった蓮を何とかしようと、必死に「セツカ」を演じたあの夜。
自分から蓮の肌に触れ、服を脱がせて……「キスマーク」のつもりの歯形を首筋に残し。
その後、それはキスマークではないと「カイン」に指摘され、歯形の上から正しい「キスマーク」を施した。
(わ、私ってばあの時っ……)
ぼふん、とキョーコの頭が爆発する。

「い、いやあああああああ!」
「?!」
思わず悲鳴を上げて跳び上がり、ハデスの閨から飛び出してしまったキョーコ。
突然のことに、蓮もスタッフたちも固まる。

「か、カーット!!」
ややあってから、監督の声がかかる。
その鋭い声で、キョーコもスタッフたちも我に返る。
「ど、どうしたんだい京子ちゃん」
閨の外でうずくまってしまったキョーコに、監督が声をかける。
「す、すみません……」
そろりと顔を上げたキョーコの顔は真っ赤で。うるうると目をうるませているのを見て、監督は言葉を詰まらせる。
そして閨から身を乗り出していた蓮も、びきりと固まる。
「京子ちゃん……」
「す、すみません……取り乱してしまって」
キョーコはぺちぺちと頬を叩いて平常心を取り戻そうとしているのを、監督も周りのスタッフも茫然と見守っている。

「……監督?」
暫く立って少し落ち着きと取り戻したものの、まだ熱が昇ったままの顔をパタパタと仰ぎながらキョーコが呼びかけると、監督ははっと我に返る。
「あ……落ち着いた?京子ちゃん」
「はい、すみませんでした」
ぺこりと頭を下げるキョーコに、監督はひらひらと手を振って見せる。
「いやいや。京子ちゃん、今までリテイクほとんどなしだったからびっくりしただけだよ。どうかしたのかい?」
「あ、いえ、それはその……」
(まさか、あの時の敦賀さんを思い出しちゃったなんて言えるわけがないじゃない!)
キョーコが言いよどんでいると、監督は追及することをあきらめたらしい。
「まあ、そういうこともあるか。撮り直しするけど、大丈夫?」
「は、はい!」
「じゃあ、スタンバイしてくれる?」
「はいっ!」
監督に言われたキョーコはすぐにスタッフたちにも詫びを入れ、ハデスの閨に戻ったのだった。

閨では、蓮が寝そべったまま待っていた。
「敦賀さん、すみません……」
キョーコが謝ると、蓮は柔らかく微笑んだ。
「いや……ちょっとびっくりはしたけど。もう落ち着いた?」
「はい」
キョーコはそっと閨に入る。
「一体、どうしたの?」
監督と同じ質問をされて、キョーコはますます返事に困る。
「えっと……」
どう誤魔化すべきかと、脳内で複数のキョーコが相談しているうちに……

「敦賀君、京子ちゃん、始めるけどいいかな?」
「あ、はい」
監督の声がかかり、会話が途切れる。
原因を聞き出すのは無理だと判断した蓮。スタンバイの体勢になりながら小声で尋ねる。
「撮り直し、大丈夫かな?」
蓮は純粋にあれほど取り乱したキョーコが平常心を取り戻して、演技ができるのかを尋ねたのだが。
「だ、大丈夫です!敦賀さんには負けませんから!」
キョーコは挑戦状だと受け取ったのだった。蓮にまたがり仁王立ちし、眉をつり上げる。
「勝ち負けの問題じゃないと思うんだけど……」
蓮が小さく息を吐いたとき、監督が撮影開始のカウントダウンを始めた。

先ほどと同じように、キョーコが蓮の上に座る。
撮影が始まり、先ほどと同じやり取りが繰り返されて。
コレットがハデスの衣服を掴んだところで……
コレットの動きが止まってしまった。
「すみません……」

その後、何度も撮り直しが行われたが。
コレットがハデスの服を剥ぐ段になると、コレットがすっかり抜けてしまったキョーコは固まったり赤くなって叫びだしたり。
同じところでカットになってしまうのだった。

「す、すみません……」
謝るキョーコに、監督はため息をつく。
「キョーコちゃん調子が悪いみたいだし。ちょっと休憩入れようか」
「はい……」
順調に撮影が進んでいたこともあり、20分間の休憩を入れることになった。
監督から休憩を告げられ、スタッフたちはスタジオを出ていく。

監督もスタジオを出ていき、キョーコはその場に立ったまま俯いて唇をかみしめる。
その様子を、蓮は少し離れた場所からじっと見つめていたのだった。

【NEXT】
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すすまないー。
とりあえず次回で、今回の撮影話は終了になるはず!

9号掲載の13話を蓮キョ変換してもだもだ。
変換しなくても、コレットさんとハデスさんが可愛くてたまらない。
おかげで「くすしとめいおう」は4話+1話+1話、になりそうなヨカーン。
そしてうっかり13話の続き妄想も書きたくなってしまった!
浮気注意報発令中?


素敵スキビサイト様への玄関口。
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