2015/02/19

君に捧げる恋の歌。

突発短編でござる。
某様とお話しさせて頂いた中で浮かんだネタ。





とある日の午後。
ラブミー部の部室で、キョーコが蓮主演の連続ドラマの感想を熱く語るのを、蓮は穏やかな笑顔を浮かべて聞いていた。
「ストーリーがどう展開していくのか読めなくて!毎回たのしみにしているんです!」

今シーズン蓮が出演しているのは、とあるカフェで出会った男女6人の物語。
それぞれ違った境遇の彼らが出会い、トラブルに巻き込まれたり新たな人間関係を築いていったりするドラマは、キョーコが言うとおりいい意味で視聴者の予想を裏切る展開が続き、視聴率もウナギのぼりの今シーズンNo.1のドラマである。
蓮が演じるのは、ミュージシャンになる夢をあきらめた青年、直哉。
彼は歌うことをやめ、日々バイトに明け暮れているという設定だ。

「今は4人の恋愛がややこしいことになっていますよね。一番気になるのは直哉です。沙織と付き合っていますけど、実はずっと片思いしている人がいるんですよね?」
「うん」
「沙織のことは大事にしているのに、デートの時でもふとどこかさびしげな表情をするところがこう、ぐっときました!」
「そういってもらえると嬉しいね」
「はいっ!それから、主人公の6人はみなさん演技派の方ばかりで、お芝居のお勉強にもなります」
中でも敦賀さんが一番ですけど!と握り拳を作って言うキョーコの姿に、蓮の頬は緩む。

「じゃあ、ドラマを楽しんでくれている最上さんにネタバレしちゃおうかな」
「えっ?何ですか?」
食いつきながらも、「あっ!でもあまり激しいネタバレはやめてくださいね!ああでもやっぱり聞きたいかも!」と迷うキョーコ。蓮はくすくすと笑って「じゃあ、少しだけにするよ」と前置きをする。
「実は俺、歌うんだ」
「え?敦賀さんがですか?」
キョーコは目を丸くしている。蓮の予想通りの反応だ。蓮はくすりと笑って、話を続ける。
「正しくは歌を歌わないと決心していた直哉が、だけどね」
「それは……分かってます」
答えるキョーコはじっと蓮を見つめた後にふと視線をそらす。
これは蓮の予想とは少し違った反応。蓮はちょこんと首をかしげる。

「最上さん、何か気になることでもあった?」
「いえ……」
言いよどむキョーコ。ごにょごにょと口の中で何かを言っては俯き、なかなか答えは帰ってこない。
そこで蓮は、キョーコに最も有効な一言を選択して声をかけた。
「ねえ、最上さん。何か感じたことがあるのなら教えてくれないかな?これからの演技の参考にもなるし」
演技のことだと言えば、キョーコは必ず言いにくいことでも答えてくれるのだ。

蓮の予想通り、キョーコはためらいながらも、口を開いた。
「あの・・・・・・・敦賀さんが歌うところって、あまり想像できないなって思ってしまったので」
すみません、と頭を下げるキョーコに、蓮はにこりと笑ってみせる。

「そうだね。俺も進んで歌うこともないし、これまで歌う機会なんてほとんどなかったからね。今必死でレッスンを受けているけど、なかなか大変なんだよ?」
「……そんなことを言いながら、すぐに何でもできるようになるんですよね?」
蓮の言葉に、キョーコはじっとりと疑いのまなざしを向ける。
「ひどいなぁ、どうしてそんなことを言われなきゃいけないのかな、君に」
「だって敦賀さん、『DARK MOON』の時のピアノだって、数時間のレッスンで弾けるようになったって言うじゃないですか。きっと歌だってあっさりと歌ってのけるに違いありません。否定したって説得力はありませんからね!」

反論しようとしても、先手を打って防がれてしまった。
そっぽを向いて聞く耳を持たないそぶりを見せるキョーコに、これは何を言ったところで無駄だろうと判断した蓮は、話題を変える。

「まあ歌はともかくとして、それ以上に苦労したことがあるんだ」
「え?敦賀さんがですか?」
「うん。実は今回の歌、俺が作詞したんだ」
「ええええ!敦賀さんが、ですか」
「うん」
驚くキョーコの反応の良さに、蓮は笑ってしまいそうになるのをこらえる。
「はー……本当にお仕事の幅が広いですね」
「いや、今回は特別。依頼が来てから、社さんや松島主任とも相談して決めたんだよ」
「そうなんですか……」
「うん。この依頼内容だったら俺も直哉の気持ちがよく分かるし、直哉として作詞しても大丈夫だろう、ってことで最終的に引き受けたんだけど。気持ちを表現する言葉を選ぶのがなかなか難しかったね」
「敦賀さんでも苦労するんですね」

キョーコにとって蓮はまさに「万能」なのだろう。蓮は苦笑する。
「俺だって何でもかんでもできるわけじゃないよ。むしろ作詞をするなら、最上さんの方が得意なんじゃないかな?」
「えっ?私の方が、ですか?」
「うん。だってよく、他の世界の住人になっているだろう?」
「他の世界……?」
「周りの声が聞こえなくなるくらい、メルヘンな想像を広げていることもあるし?」
「なっ……」
蓮の指摘を受けて、キョーコの顔に一気に熱が昇る。
「それって褒めてないですよね!敦賀さんのいじめっこ!!」

今度は体ごと横を向いてしまったキョーコ。ちょっと言い過ぎだったかな、と蓮は反省する。
「ごめんね最上さん。ちょっと言い過ぎた」
ぺこりと頭を下げた蓮をちらりと見て、キョーコは体の向きを変えた。
キョーコがゆっくりと蓮の方に向き直って蓮の方を見たそのタイミングで、蓮は続けた。
「でも苦労したことは本当だし……あの歌はぜひ、君に聞いてほしいんだ」
「え……?」
急に真剣なまなざしをまっすぐ向ける蓮に、キョーコは視線をそらせることができなくなる。
「そ、それは……これからドラマも見ますし、必ず見ます」
「うん、約束だよ」
真剣なまなざしから一転して柔らかく微笑まれて、キョーコはますます視線を合わせているのが恥ずかしくなり、俯く。
「あの……一体どんな詞を書かれたんですか?」
「それは、その時までの秘密だよ」


それから数週間後。
オンエアされたドラマの中で蓮が歌ったのは、長年隠していた想いをつづった恋の歌。
そして、蓮がそれを自分を思いながら書いたものだとキョーコが知るのは、その数日後のことだった。

【END】
******************************

「蓮さん、作詞する」がテーマでした。
単に「メルヘン世界の住人の最上さんは作詞が得意そうだね」と蓮さんがキョーコさんを
からかう話を書きたかっただけだったなのが、また着地点がおかしくなった……

余談ですがうちのPCさんは「策士」が一番最初に変換されます。

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