2015/02/12

企画:ふんわり、ほんわり、ほかほか?

ぺいぺら、また無謀なことをやらかす。

「薄/明/光/線」 吟千代様 主催の『闇鍋企画』に参加させていただくことになりました。
ゆるっとふわっと、に甘えた結果、見事な遅刻……あわわわ……
吟千代さまのご厚意には感謝感謝です!

素敵企画の会場はこちら!
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素敵な絵やお話がたくさんのこの企画。
参加されているのは尊敬する方々ばかりでぺいぺらはガクブルしっぱなしであります!
最初はおでんに混ぜていただこうなどと考えていたのですが、断念。
流石に無謀すぎるよNE☆

遅刻までしたくせにありがちな話での参加でお恥ずかしい限りですが。
暖を取るための焚火の薪にくらいはなればと思います。

両片思いな蓮キョでござる。


今冬一番の冷え込みだと天気予報で伝えられる今日も、ビジネス街の片隅にある公園で撮影は休まずに行われている。
先ほどまでは時折、太陽が雲の合間から顔をのぞかせていたが今はそれもない。
ぴゅうぴゅうと寒風が吹く中に立つキョーコは……少し離れた場所で行われている撮影を冷ややかな目で見つめていた。

春に放送されるスペシャルドラマ。キョーコはヒロインの親友役として大抜擢された。
制作側から直接指名してもらったことはもちろん、主演が蓮だと聞いてキョーコは両手を上げて喜んだ。
演技の勉強ができる!と。
そして……現場で蓮に会える、と。

しかしそれもつかの間。
ヒロインに抜擢されたアイドルの演技が酷いもので、NGも数えきれないほど。撮影予定はどんどん後に押していく。
そして凍えるような寒さの中撮影している今も、何度もNGを出して撮り直しを余儀なくされているのだった。

(あぁ……やっと、だわ……)
ヒロイン役のアイドルが何度も同じセリフでNGを出し、ずっと頓挫していた撮影がようやく進み始めた。
先ほど蓮がアイドルに話しかけていたから、きっとアドバイスをしたのだろう。
キョーコはほっと息をつくと同時に、急に寒さを感じてぶるりと体を震わせる。
「さ、さむ……」

このシーンでは、キョーコの出番はない。
しかし蓮の演技は勉強になるからと待機用の車から外に出て、撮影を見学していたのだ。
衣装の上にコートを羽織っていても感じる寒さ。
衣装のままずっと出番を待っていた蓮が感じている寒さは、キョーコの比ではないはずだ。
「敦賀さん……大丈夫かなぁ」
寒さなどちっとも感じていないという表情で撮影に臨んでいる蓮だが、相当体は冷えているだろう。

このままいけば、あと十分ほどすればずいぶんと遅くなった昼休憩になるはずだ。
腕時計を確認してキョーコはほっと息をつくが、それもつかの間。
出演者もスタッフも昼食をとっていないので休憩がなしになるということはないはずだが、アイドルが連発したNGのために時間は短くなる可能性があることに気付く。
「敦賀さん、ちゃんとお昼ご飯食べられるのかしら……?」
お昼以前に、忙しい蓮は休憩時間すら危ういのかもしれない。下手をすれば、冷えた体を十分に温める暇すらないのかもしれない。
(すぐにあたたかくなる方法ってないかしら……)
キョーコはきょろきょろとあたりを見回す。公園の周りはオフィスビルが立ち並んでいる。
その一角にあるものを見つけたキョーコは、とん、と手を打った。
「あれだわ!」



「カット!お疲れ様です!!」
監督からかかったカットの声に、「やっと終わったーーー!!」と安堵の声を漏らしたのはヒロイン役のアイドルだった。
スタッフ一同もやれやれと息を吐いている。中には「誰のせいだよ」と言わんばかりでアイドルを見ている者もいる。
「遅くなりましたが休憩をとってください。お弁当はあちらに用意しています。休憩室として隣のビルの会議室を借りていますので、そちらでどうぞ」
案内を受けて、出演者とスタッフたちが動き出す。

蓮もその流れに乗り、アイドルやスタッフに「「おつかれさま」と声をかけてその場を去る。
ぞろぞろと移動する人の波から少し離れてから、蓮は周囲に視線を巡らせていつも撮影の終わりを待ってくれている少女の姿を探した。
(いない……?)
いつもなら近くにいるはずのキョーコがいない。このドラマの撮影が始まってからというもの、こんなことは初めてだ。
10分ほど前には少し離れた場所で撮影を見ていたのを確認している。
さて、キョーコはどこに行ってしまったのだろうかと蓮が思案し始めたその時。
ふわり、と頬に暖かいものが触れた。
「え?」
蓮が思わず一歩身を引くと、視界に入ったのは紙に包まれた何か。
先ほどの感触と形から判断したところ、中のものはどうやら柔らかくて丸みを帯びたものらしい。
「お疲れ様です、敦賀さん」
そして、それを持ったキョーコだった。

「あ、最上さん……?」
「よかった、ちょうど撮影が終わったところで」
にっこりと笑うキョーコは、そっと蓮の手を取った。
(冷たい……)
キョーコの手が冷え切っていることに蓮は驚く。
しかしすぐに蓮の手には先ほどの紙が置かれ、そこからじんわりとぬくもりが手に伝わってキョーコの手に触れたときの冷たさは消え去ってしまう。
「最上さん、これは……?」
キョーコはにっこりと笑う。
「肉まんです。近くにコンビニがあったので、買ってきました」


2人は用意されている休憩室には行かず、ロケバスへと移動する。
皆、休憩室を利用しているのだろう。ロケバスは無人だった。
ほんのりと暖気が残る車内の長椅子に、キョーコと蓮は並んで腰掛ける。

「社さんは次の仕事先に連絡をしてから来られるそうです。お弁当を持ってきてくださるそうなので、こちらで待つようにとおっしゃってました」
「そう」
コンビニからの帰りに会ったんです、と言いながらキョーコは持っていたビニル袋から缶コーヒーを取り出す。
「待つ間に召し上がってください」
キョーコに「どうぞ」と差し出された缶コーヒーを受け取った蓮。右手には肉まん、左手には缶コーヒー。
蓮はそれを交互に眺めてから、ちょっぴり困った顔をしてみせた。
そして、肉まんをキョーコに差し出す。

「俺のために買ってきてくれたのは嬉しいけど……肉まんは最上さんが食べてくれないかな?」
「え?あ!まさか敦賀さん、肉まんはお嫌いでしたか?」
しまったと顔を青くするキョーコに、蓮はゆるゆると首を横に振った。
「いいや。嫌いじゃないよ」
「それならぜひ召し上がってください!ちょっと冷えてしまったかもしれませんが、中はまだアツアツのはずですから!あったまりますよ?」
蓮が差し出した肉まんをキョーコが押し返すと、蓮はまた首を横に振った。
「俺が今これを食べちゃうと、弁当が一切入らなくなっちゃいそうだからね」
「あ……」
極端に小食な蓮ならば、肉まん1つで腹の容量が満たされてしまうということは十分にありえる。
「俺は別にそれでもかまわないけど……弁当を食べないと、君や社さんに怒られてしまうことは目に見えているからね」
栄養バランスを考えると、肉まんより弁当を選ぶ方がいいと蓮も判断したのだろう。

「分かりました」
理由あってのことだと分かったキョーコは、蓮から肉まんを受け取る。
「これは私が頂きますが……敦賀さんはちゃんとそのコーヒーであたたまってくださいね。それから、お弁当はちゃんと食べてください」
「後者については努力はするってことでいいかな?」
だめです、と睨み付けてくるキョーコに蓮は苦笑する。
「そんな怖い顔をしなくても食べるよ。それより最上さん、早くその肉まんを食べないと冷めてしまうんじゃないかな?」
「あっ!そうですね」
「君もずいぶん体が冷えていたみたいだし。あったまらないとね?」
蓮に言われて、キョーコは目を丸くする。
「え……どうして……」
「肉まんを渡してくれた時、手が冷たかったから。ずっと撮影を外で見ていたんだろう?」
「はい」
「やっぱり……」
ふわりとほほ笑んだ蓮。気にしてくれていたんだという嬉しさもプラスされて、キョーコは蓮の笑顔を直視できなくて俯いた。
「ほ、ほんとうは2つ買う予定だったんです。でもこれが最後の1つで……」
「そうだったんだね。じゃあその貴重な最後の1つ、おいしいうちに食べてあげないとね」
「はい」

蓮に促されて、キョーコは包みを開けて肉まんをほおばる。
皮の部分は少し冷めていたが、中身は暖かいまま。あたたかさと具のうまみが口内に広がり、キョーコは顔をほころばせた。
「おいしい?」
一口、また一口と肉まんをほおばるキョーコを見つめながら、蓮も缶コーヒーをあけて一口飲む。
尋ねられたキョーコは肉まんをもぐもぐと咀嚼して飲み込んでから、こっくりとうなずいた。
「はい!」
満面の笑みのキョーコに、蓮もつられて笑う。
「最上さん、ひょっとして肉まん好きなの?」
「え…あ…はい」
「やっぱり。すごくおいしそうに食べるよね」
蓮に言われて、キョーコは頬を染める。
「だ、だって……肉まんってふんわりした皮の中に具が隠れている、お楽しみ箱みたいじゃないですか!」
「お楽しみ箱……最上さんらしいね」
くすくすと笑いだした蓮に、キョーコはますます顔を赤くする。
「もうっ!笑わないでください!!理由はそれだけじゃないんですっ!」
「そうなの?ごめんごめん。他にどんな理由があるの?」
「肉まんは寒い時に食べると格別においしいんです」
「へぇ……どんなふうに?」
「ほんわり優しく体をあたためてくれる感じがするんです。食べた後は心もほかほかになって、幸せな気分になりますよ!」
答えた後、また笑われるのはごめんだと、蓮にそっぽを向きながらキョーコは一口肉まんをほおばる。そしてまた、顔をほころばせた。
ここで余計なことを言えば機嫌をそこねかねないと思った蓮は、黙ってキョーコが幸せそうに肉まんを食べる姿を見守っていた。

「んー!おいしい」
「うん、本当においしそうに食べるね」
またくすくすと笑う蓮に、キョーコは頬を膨らませる。
「本当においしいですから!」
「そう……じゃあ、一口もらおうかな」
「え?」
キョーコが返事をするより早く。蓮の顔がキョーコに近づいてくる。
そしてそのまま、キョーコが持っている肉まんにかじりついた。

(ひえっ!)
キョーコが驚きで声にならない悲鳴を上げる中、蓮はゆっくりと体を元に戻す。
長いすの背もたれに体を預けてもぐもぐとよく咀嚼してから、ごくりと飲み込むさまをキョーコは茫然と見つめていた。
「うん、最上さんの言うとおりふんわりした皮の中に入っている具がおいしいね。ほんわり体をあたためる、っていうのも分かる気がする」
蓮に柔らかく微笑まれて、キョーコは我に返る。
そして先ほどの蓮の行動を思い出して、顔に一気に熱がこもる。
「つっ!つつつ敦賀さん!い、今……」
「ああ、一口もらったよ。ごめんね、最上さんの幸せをとっちゃって」
「い、いえ!それはかまいませんが……」

(今!ぱくって!ぱくって!そのまま食べたわよね!)
キョーコは手にある肉まんに視線を落とす。
先ほどまで自分が食べていた肉まん。それを蓮がかじっていったのだ。
(こっ……これって……間接キスどころか……っ!!)
キョーコの顔に一気に熱が上る。
「最上さん?」
黙り込んでしまったキョーコを不審に思った蓮が呼びかける。
しかしそれはキョーコにとっては逆効果。すぐそばでかけられた声に、キョーコの全身がかっと熱くなる。
(もう!なんてことをしてくれるのよこの人は!!)
簡単に心をかき乱す蓮がちょっぴり憎らしい。一言言ってやろうとキョーコは蓮をにらみつける。

「敦賀さん……」
「ん?」
「食べたかったのなら言った後待ってください!ちゃんと割ってお渡ししたのに!」
なるべく怖い顔をしてみせたつもりのキョーコだったが。
顔は赤くそまり、目にはうっすらと涙が浮かんでいて。下から蓮を睨み付けたところでそれは蓮にとっては全くの逆効果。
凶悪に可愛い顔にしか見えず、蓮の全身がかっと熱くなる。
「ご、ごめん」
キョーコを直視できなくて、蓮は口元を押さえてそっぽを向いた。

(もうっ!敦賀さんってば……)
(何なんだ!あの可愛い反応は!)


ほっこり体をあたためてくれるはずの肉まんは……
キョーコと蓮、2人の体を必要以上にあたためてくれたのだった。

【END】
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はい。色々ごめんなさいです。
石投げるなら、拍手の方にお願いしますーーーーーー!!

どうでもいいことなんですが、私の中では「肉まん=豚まん=5●1」としか思えない残念な西の民です。


素敵スキビサイト様への玄関口。
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