2014/12/07

企画:ぼくの見つけたすてきなひみつ。

7月にsunnyさま主催の企画「LME Studio」に参加させて頂いた時の作品。
こちらにもアップしたい!と思いつつ分館オープンの準備に追われていたのと、個人的に「Omatsuri」を終わらせてからにしたいという思いがあったので今頃のアップになってしまいました。

犬視点という明らかに他の参加者様の作品から浮いたものでしたが、非常に楽しんで書いた覚えが。
ひらがな多めで非常に読みづらい一品でもあります……
これが浅節だと思ってくださいませ。


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今日もいい天気。さつえい、がんばろうっと!
がんばったらキョーコちゃんがごほうびくれるって言ってたもんね!ぼく、ほねガムがほしいなぁ。

え? ぼくがだれか、だって?
あ!!じこしょうかいがおくれました。ぼく、コロっていいます。もうすぐ1才のオス犬。
ざっしゅでけっとう書なんてないけど、けっこうすごい犬なんだよ?
何がすごいって?
ふふー。
実はぼく、タレント犬なんだ!
生まれて間もないころからいろんなドラマとかCMとかに出てるんだよ。えっへん!

今、ぼくはドラマのさつえいにきています。
主人公になっているのは「ツルガさん」っていう人。とってもやさしくて、大人気の町医者さんなんだって。アキモト先生ってよばれてる。
ツルガさんと助手のかんごしさん、ぼくの2人と1ぴきが中心の一見、ほのぼのしたドラマなんだけど……
実はそうじゃないんだ。

ツルガさんは大きな病院の先生だったんだけど、じじょーがあって追い出されちゃったんだって。
でもその大きな病院とツルガさんはまだつながりがあって、その病院からときどき人がやってきて、ツルガさんにおねがいごとをするんだ。
ぼくもこのおねがいごとにきょう力することがあるんだけど(ぼくのはなは人間よりずーっといいもんね!)
……このおねがいごとっていうのがけっこうこわいんだ……
このあいだはツルガさんが人をころしちゃったんだ。あの時のツルガさんは、いつものツルガさんとぜんぜんちがってこわかったな……

くわしいことはよく分からないけど、「人間のやみをリアルにあばく」ドラマなんだって。カントクが言ってた。
あ、そうそう。このカントク、かわってるんだよ。
「アンナ」っていうのに、おひげのおじさんなの。
「アンナ」って、モデルさんとかご近所に住んでる子とか。女の子ばっかりだと思ってた!!
おじさんもいるんだね。びっくり!

あ。話をドラマにもどすね。
このドラマ、こわいこともあるけどぼくにとってはとってもいいこともあるんだよ。
ツルガさんの助手をしているかんごしさんのキョーコちゃん!かんごしのときは「マイちゃん」ってよばれてる。
キョーコちゃんはね、ドラマの中でも休けいの時でもすっごくぼくをかわいがってくれるんだ!
時々こわーい顔をしているときもあるけど、ぼくが近づくと笑ってくれるし、いっつもふんわりいいにおいがするんだよ。
ぼく、キョーコちゃんに頭をなでなでしてもらうの、だーいすき!

あ。それからもうひとり、やたらとぼくをかわいがってくれる人がいるなぁ。
その人は休けいの時だけしか来ないんだけど。メガネをかけた男の人。
きらいじゃないけど……かなりはげしくなでまわしてくるから、ちょっとめいわくなんだよねー。

あ、また話がそれちゃった。
キョーコちゃんの話!!
キョーコちゃんはおりょうりも上手だし、れいぎ正しいってみんなにひょうばんなんだよ。この前はぼくも手作りおやつもらっちゃった!おいしかったよ!!
あと、キョーコちゃんにとってツルガさんは「そんけいするせんぱい」なんだって。
たしかにツルガさんはすごい人だと思うよ。ふだんはすごくやさしいのに、ドラマの中でおねがいごとをきくときはこわーい人になるんだもん。別人みたいになるんだ!
キョーコちゃんも「ツルガさんのえんぎは勉強になる」って言っていつもじっと見てる。

そんなすごいツルガさん、さつえい中いがいでもキョーコちゃんとよくお話してるんだけど。その時の顔ってとーーってもやさしいんだよ。
アキモト先生はそんな顔しないのに!
ツルガさんはいつもみんなにやさしいんだけど、キョーコちゃんには特にやさしいと思う。
転びそうになったらさりげなくささえてあげたり、キョーコちゃんのシーンが終わったらジュースを持っていってあげたり。あんまり他の人にはしないことをしていることが多いんだ。
みんなはあんまり気づいてないみたいだけど。ツルガさんにとってキョーコちゃんだけ特別、って感じがするのはぼくの気のせいじゃないと思うんだ。


*****


みんなやさしいし、お仕事は楽しい。ここに来るのは大すきなんだけど……
今日はちょっと気が重たい。
どうしてか、って?
今日のさつえいには、もう一匹犬が来るんだ……
ゴールデンレトリバーで、ぼくより年上でタレント歴も長いオス犬。オルドー、って名前。
前にもいっしょに仕事をしたことがあるけど……キョーコちゃんからみたツルガさんとはちがって、「そんけいできるせんぱい」じゃないんだよね。
何が、っていうとさ……
あ、ちょうど今来たみたい。
ってあの犬、来るなり何やってるんだよ!飼い主役のモモセさんにまとわりついてあちこちなめまわして……あっ!スカートの中に頭つっこんだ!!
「撮影の時はちゃんとしてるのに、それ以外は羽目を外しすぎね」ってモモセさんもみんなも!そうじゃないよ!元々そういう犬なんだよ!!メスが大好きなんだよ!メスがいたらすぐにまとわりつくんだよ!
だからそんけいなんてできないんだよーーー!!

ぼくがじーっと見てたら、オルドー……さんがこっちにやってきた。
『よう、ちびすけ。久しぶりだな』
『お久しぶりです』
うう。やっぱりおっきいなぁ。目の前にすわられると、ちょっとこわい。ぼくは頭を下げる。
『ちびすけ、なーんか言いたげだったなぁ。まさか先輩の俺に口出ししよってんじゃねーだろうなぁ』
『そんなつもりは……』
『だよなー。犬社会は縦社会。お前みたいな新人は先輩の言うことを黙ってきいてりゃいいんだよ!』
むぐぐ……言いたいことはいっぱいあるけど、言っちゃいけない。
ぼくががまんしているうちに、オルドーさん(本当はさんなんてつけたくないやい!)はきょろきょろとあたりを見回して。
あろうことか、キョーコちゃんに目をつけた!

『お。今日はえらく初々しそうなのがいるじゃねぇか。』
『えっ?』
『凹凸が足りないし色気もねーけど、面白そうだなぁ。一丁遊んでやるか』
ぺろり、と舌を出すオルドー(さん)。あああ!キョーコちゃんが狙われてる!!
『あのっ!』
『アアン?』
ぼくは止めようとしたけど、オルドー(さん)ににらまれて、足がすくんでしまう。
『邪魔すんじゃねぇぞ!』
動けないぼくを鼻で笑って、オルドー(さん)はキョーコちゃんの方に走って行ってしまった。


『わん!わんわん!』
「きゃっ!」
オルドー(さん)はキョーコちゃんに飛びかかる。あああー!キョーコちゃんがびっくりしてしりもちついちゃったじゃないか!
そしてオルドー(もう呼び捨てでいいや)ってば、キョーコちゃんがしりもちをついたのをいいことにじゃれつき始めた!!
「あなた、今日のゲストの子でしょ?人なつっこいね」
オルドーがむじゃきにじゃれてると思いこんでるキョーコちゃん!よろこんでなでてる場合じゃないよ!早く逃げた方がいいよーー!
さけぶことのできないぼくの声はキョーコちゃんにとどかない。さけべても、犬の言葉なんてわかってもらえないだろうけど……
『わんっ!』
オルドーは1回鳴いてから、キョーコちゃんの顔をぺろぺろとなめはじめた。
「もうっ。くすぐったいってば!」
オルドーをよけようとするキョーコちゃん。その上にオルドーはおおいかぶさるようにのしかかっていく。
ああああ!だめだよキョーコちゃん!オルドーってば次はぜったいに……!
「きゃっ!そこはだめっ!」
ああああやっぱり!オルドーってば、キョーコちゃんのスカートに頭をつっこんだよ!
そしてあろうことか……
「やっ!そんなところなめないでっ!」
ぺろり、とひざより少し上の太ももの内がわをなめたみたい。オルドーはすばやくスカートから頭を出して、きょとんととぼけてみせる。
ああああ!何てやつ!かわいこぶっても中身はまっ黒のくせに!そしてもう一回やろうとか考えてるくせにーーーー!
がまんがならなくなって、ぼくはオルドーに向かっていこうとしたんだけど。
急に後ろからすぅっ、って。つめたい風がふいてきたように思えてぶるりと身をふるわせたそのあとに。
『きゃうんっ』
オルドーのなさけない声が聞こえてきた。

みるとそこには、くびわをつかまれてもがいているオルドーがいて。
びっくりするくらいこわい表情でオルドーをにらみつけながらくびわをつかんでいるツルガさんがいた。
「出演者に危害を加えるなんて、躾がなってないよな……」
すぅっ、と目を細めるツルガさん。

ここここここ!こわいいいいいいーーーーーー!
犬社会はたて社会とかそんなこと言ってられないよぅ!犬だったらこの人は大型のりょう犬……いや、犬っていうよりおおかみだよぅ!
うん、この人にさからっちゃいけない、ぜったい!犬だとか人間だとかそういう問題じゃないよぅ!

オルドーもすっかりおびえていて、ツルガさんが手をはなすと、いちもくさんにスタジオのすみへにげていった。
やーいっ!ざまーみろーー!
ツルガさん、めちゃくちゃこわいけど!!
オルドーからキョーコちゃんを守ってくれたから大すき!そんけいしちゃう!!
ツルガさんはオルドーがいすのかげにかくれるのをを見とどけてから、まだしりもちをついたままのキョーコちゃんに手をさしだした。

「大丈夫?最上さん」
「あ……はい」
ツルガさんの手をかりて、キョーコちゃんは立ち上がったけど。あぶない!足元がふらついてるよ!
多分、オルドーに変なところをなめられてびっくりしちゃったんだよね。
キョーコちゃんがたおれそうになるけれど、ツルガさんががっちりとだきとめてころばずにすむようにしてくれた。
やるぅ!
「びっくりした?」
「はい……すみません」
「足元がしっかりするまで、つかまっているといいよ」
「ありがとう……ございます」
ツルガさんにつかまったまま、うつむくキョーコちゃんのほっぺはほんのり赤くなっていて。あれ?おめめがうるうる?
いつもかわいいけど、なんだか今のキョーコちゃん、いつもよりすんごくかわいいんだけど?
ねっ、ツルガさん!

って。
ツルガさん、見てないー!
オルドーをにらみつけて(ドラマで人をころしちゃった時みたいな顔をしてるよ!)、「一度お仕置きが必要だな」とかこわいこと言ってる場合じゃないでしょーーー?
もうっ、しょうがないなぁ。

ぼくはキョーコちゃんに見つからないようにそっとツルガさんの足もとに近づいて、ズボンのはしをくわえて引っぱった。
それに気づいたツルガさんがぼくの方を見たから、ぼくはくいっと頭をキョコちゃんの方にむける。こんなかわいいキョーコちゃんを見ないと、助けたツルガさんがソンするもんね!
カンのいいツルガさんは、ぼくの考えを分かってくれたみたい。
キョーコちゃんの方を見て、すごーくやさしい顔になったけど。あれれ?すぐに、顔がかたまちゃった。こわくもないけど、いつものえがおでもない。へんなの。

ぼくが首をかしげていると、キョーコちゃんがぼくがいることに気がついた。
「あ、コロちゃん」
あ、ざんねん。めちゃくちゃかわいかったキョーコちゃんの顔がいつものキョーコちゃんの顔にもどっちゃった。
『わん!』
「もしかして、心配して来てくれたの?」
『わんわん!』
しんぱいだったにきまってるよーー!本当だったらぼくがオルドーからキョーコちゃんを助けたかったんだよ!
でもキョーコちゃん、ツルガさんに助けられてとってもうれしそうだから、もういいや。
ぼくはツルガさんとキョーコちゃんのまわりをぐるぐるとまわる。
「ふふ……ありがとう」
『わん!』


「おーいそこのお2人さん、そろそろ撮影始めるぞー」
あ。カントクだ。
「なにやってんだ、そんなところでくっついて。もしかしてこの先の予行練習か?でも2人がいい雰囲気になるのにはまだ数話かかる予定だぞー?」
「「あっ」」
カントクに言われて、くっついたままだったツルガさんとキョーコちゃんはぱっとはなれた。あ、キョーコちゃん、ちゃんと立てるようになってる。よかったー。
キョーコちゃんは赤くなってうつむいたけど、ツルガさんはいつもの笑顔(でもちょっとこまってるバージョン)になる。
「監督、からかわないでください。さっき、最上さんが今日出演する犬に襲われて大変だったんですから」
「犬に?ってこいつか?」
『うう~わんわんわん!』
しつれいな!ぼくじゃないってば!!
「監督、コロちゃんじゃなくて、今日ゲスト出演するゴールデンレトリバーの方です」
キョーコちゃんがカントクに言ってくれる。そうだよ!ぼくはそんなことしないもんね!!
「ああ、あいつか」
「今から変更は無理でしょうけど。さっきは百瀬さんや他の女性スタッフにも過度にじゃれついて転ばせたり太ももを舐めたりしていたみたいですから、あの犬には気を付けた方がいいかもしれません」
「そうか。じゃああの犬には力のある男性スタッフを付けておくか」
「そうするのが一番だと思います」

あれ?ツルガさん、ほかの人にもオルドーがキョーコちゃんにしたみたいにじゃれついてたの、知ってたんだ。
でも(それはもうおそろしい空気をまとって)助けたのはキョーコちゃんだけだよね?
……やっぱり、ツルガさんって、キョーコちゃんをとくべつあつかいしてるよね!
キョーコちゃんも、さっきツルガさんに助けられて嬉しそうだったし……
2人ってもしかして……イイカンジ?
まわりの人たちはもちろん、ツルガさんとキョーコちゃんがおたがいに気づいてないみたいだけど。
ぼくにはわかっちゃったもんねー! ふふーーー!

『わんっ!』
「コロちゃん?どうしたの?」
すごいひみつに気づいちゃって、ぼくはうれしくってたまらない。
しっぽをふっていると、キョーコちゃんがなでてくれた。
「何だかずいぶん興奮しているみたいだね」
「どうしたんでしょうね、突然」
キョーコちゃんはふしぎそうにぼくを見ているけど。うふふ。教えてあげない!
ぼくは頭をなでてくれるキョーコちゃんの手のひらをぺろん、となめた。
うん、なめるのはこれだけ。
あんまりやりすぎると、ツルガさんにおこられちゃいそうだもんね。こわいツルガさんににらまれるなんて、じょうだんじゃないよ!

犬社会はたて社会。
犬社会じゃなくても、こわいものにはさからっちゃいけないんだもんね。ツルガさんにはさからわないよ、ぼく。
キョーコちゃんにはあまえるけど、悪いことはしません!

「おーい、いつまでじゃれてるんだー?主演2人が来ないと、始められないぞー」
あ、カントク。いつの間にあっちにもどってたんだろう?
「すみません、今行きます」
『わんっ!』
「監督、2人と1匹ですよ」
キョーコちゃんがていせいしてくれる。うんうん、そうだよ!
「そうだな。ま、急いでくれ」
「はい」


*****


その後のさつえいはじゅんちょうで。
しちょうりつも右かた上がりだって、カントクもよろこんでた。

ぼくはそのあたりのことはよく分からないけど。
さつえいの間、ツルガさんとキョーコちゃんがずーっとなかよしで。
しかもそれがさつえいがすすむたびになかよしレベルがアップしていってたのが一番うれしい!
(アキモト先生とマイちゃんはどんどんなかよしになって、らぶらぶになったけどね!)

でもやっぱり、だーれも気づいてなかった気がする。
あ、でもあのちょっとめいわくなメガネのおにーさんだけ気づいてたかな?
休けい時間にぼくをなでながら「あの2人の間近にいて、お前は砂を吐きそうにはならないか?」ってツルガさんとキョーコちゃんとことだと分かるけど、イミフメイなことを言ってたもん。


さあ、今日はもうさいごのしゅうろく。
ツルガさんとキョーコちゃん、休み時間でもアキモト先生とマイちゃんみたいになってる時があるけれど。
やっぱり(一人をのぞいて)気づいてないみたい。もちろん、本人たちもだよ。
時々気づいて「はっ!」ってなってるもんねー。

うふふ。これは2人の一番近くにいたぼくだから気づけたひみつ。
たて社会のてっぺんにいるツルガさんにだって、意外な顔があるんだって分かったよ!
キョーコちゃんも、ツルガさんがいっしょの時にとってもかわいい顔をするんだってこともね!

うん、このひみつ。
だれかが気がつくまで、教えてあーげない!!

【END】



ゴールデンレトリバーの黒さと、犬にまで嫉妬する蓮さんが書きたかっただけです。
アキモト先生とマイちゃんについては、ちょっとした設定はできあがっているのでいつかお話やら絵やらでなんらかのものを形にして出せればなーと思います。



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