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2014/12/01

Omatsuri~不思議の夜・久遠~ 後編

時系列の非常にややこしい「Omatsuri」シリーズ。
こちらは、一番最初のお話「Omatsuri~不思議の夜~」の久遠視点になります。
「Omatsuri~不思議の夜のその先に~」の後に読んで頂く方が分かりやすいかも?

※「Omatsuri」シリーズについて※
 ・一番最初にあたるお話は、企画参加作品「Omatsuri~不思議の夜~」
  まずはこれを読むのがおすすめ、というより読まねば他が分かりません。
 ・シリーズに含まれるのは「不思議の夜」の松太郎編、久遠(前後)編、
  「不思議の夜のその先に」はキョーコ編(記載はありません)、蓮編の
  全5話(6話)。
 ・「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」が完結編となります。
  (蓮編は、霜月さうら様からの頂き物です)
 ・その他のシリーズ作品は、どの順に読んでも問題はないはず。
  順番は最初と最後だけが大事なのです。
 ・ぶっちゃけ最短で読む!という方は……
  「Omatsuri~不思議の夜~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」
  だけで十分なのではないかと思います。
 ・けれどもやはり、完結編は全ての作品をお読み頂いてからの方が
  楽しんで頂けると思います。






(ここ、だよな)
祭り会場を抜けた先にあった階段を上りきると、そこに建っていたのは小さな社。
人気もなくひっそりとたたずむ神社の敷地に、久遠は乱れた呼吸を整えながら入っていく。
(誰も、いない……?)
敷地には屋外灯が二本あるだけで、あたりをぼんやりと照らしてはくれているが歩き回るには心許ない。
久遠はそっとあたりの様子を伺いながら社に近づいて行った。

(あれ……?)
数歩行ったところで、社のすぐ手前に女の子が1人立っているのに気が付いた。
木陰に身を隠しながらそっと近づく。何とか女の子の顔が確認できる位置まで近づいた久遠は目を丸くする。
(キョーコちゃん?!)
そこに立っていたのは、数日間、河原で一緒に過ごしたキョーコだったのだ。

(どうしてこんなところに……?)
キョーコは久遠のことを妖精で、もう二度と会えない存在だと思っているはず。
そんなキョーコに久遠は声をかけるべきか否か迷いながらそろそろと近づくうちに、キョーコの目に涙が浮かんでいるのに気が付いた。
(泣きそう……?!)
キョーコの涙はじわじわと盛り上がり、ついには零れ落ちそうになる。
次の瞬間久遠はさっとお面を被ると、キョーコの方へと飛び出していた。

「ふぇ……」
小さな声が上がったところで、後ろから回り込んでキョーコの目をそっとふさぐ。
「え……?」
キョーコの小さい声を聞いて、久遠は我に返った。
キョーコの涙を見たくない、その一心での行動。体が勝手に動いてしまった。
動揺しつつそっとキョーコの目から手を離すと、キョーコはくるりと振り返った。

「だぁれ?」
涙混じりで尋ねる声に久遠はどうこたえてよいものやら分からない。
「あなたはだれ?」
考えるうちにもう一度尋ねられた。
やはり答えは見つからない。それよりも久遠の視線はキョーコの瞳にたまったままの涙に釘づけだった。
(やっぱり……泣いてたんだ)

あの涙を止めてあげるにはどうしたらいいんだろう。
さっきの女の子のように、何かプレゼントをしたら止めてあげられるんだろうか。
それならばさっきの女の子にあのウサギをあげるんじゃなかった……
そんなことを考えながら、どうにもできない自分が歯がゆくて。
何となく、少しお面をずらしたその時だった。
「コーン……?」
河原で過ごした時と同じ呼び名を問いかけられて、久遠は我に返る。
(そうだ……妖精が気まぐれに現れたことにすればいいんだ……)

泣いていても「ショーちゃん」で笑顔になる女の子。
「ショーちゃん」にはなれないけれど、彼女が憧れる「妖精」にはなれる。
それで彼女に笑顔が戻るなら、と願いながら人差し指をそっと立てて口元に持っていく。
「ひみつ」も彼女の好きなもののひとつ。

久遠の願いどおり、目を見開いたキョーコの表情がみるみる明るくなっていく。
キョーコは久遠の意図をくみ取ってくれたらしい。こくんと大きく頷いた。
溜まっていた涙がぽろりと零れ落ちたが、それ以上の涙は浮かんでくる様子はなかった。

(よかった……)
久遠は内心で安堵の息を吐く。久遠がキョーコに手を伸ばすと、キョーコはそっとその手を取った。
その途端、急に久遠は周りの様子が見えるようになった。どうやらキョーコの涙に気を取られすぎていたらしい。
よく見ればここは、何度か訪れたことのある場所。
父がいない時間に周囲を探険したことがある神社だった。
どうして気づかなかったのだろうかと不思議に思いつつ、久遠はキョーコを連れて歩きだす。

(たしか、こっちの方に行くと見晴らしがよかった気がする)
久遠はキョーコを社の裏手に連れて行こうとしたが、急に手を引っ張られる。
「ま、まってコーン」
(何?)
「私、ショーちゃんと待ち合わせしてるの。あんまり遠くに行っちゃったら、ショーちゃんが気づかないかもしれないの」
(ショーちゃん……)
河原で散々キョーコから聞かされた人物の名。
よく分からないけれど胸にもやもやとしたものがこみあげてきて、久遠は思わず口元を歪ませる。
(今、ここにいるのはそいつじゃなくて俺なのに……)
「コーン?」
キョーコが不思議そうに久遠を見つめている。久遠は湧き出るもやもやをぐっと抑え込む。
(キョーコちゃんの一番はショーちゃんだって分かってる。今は……キョーコちゃんの涙が止まっただけで、もういい)
そう自分に言い聞かせながら久遠はキョーコの手を引いて、神社の正面へと戻る。

(裏手ほど景色はよくないけど……あそこなら、誰かが来たら分かるはず)
久遠は社の横手を指差す。
「あっち?あっちに行くの?」
尋ねるキョーコに小さく頷くとキョーコも頷き返してきたので、久遠はキョーコの手を引いて社の横手の茂みへと入る。
思いのほか伸びていた草や枝を払って通路を確保しながら、キョーコを導く。

短い草木のトンネルを抜けるとすぐに開けた場所に出た。
元々少し高台に位置する神社。草木がなくなると街並みが広く見渡せるし、空も広く見える。
「うわぁ……」
目の前に広がる光景に感嘆の声を上げて久遠を追い越して先に行こうとするキョーコを慌てて止める。
(キョーコちゃん、そっちは崖!!)
強く手を引くと、キョーコは久遠の言わんとしたことが分かったらしい。
「あんまりあっちに行っちゃダメってことなのね」

久遠が頷いたその時。
ぱあっとまた空に火の花が咲いた。
続いてどーん、という大きな音。
「あ、花火……」
どうやら先ほど途絶えたのは、花火の終わりではなく次の準備までの中休みだったらしい。
再開された花火は、先ほどよりも短い間隔でどんどん打ち上げられて次々と空に鮮やかな光の花を描く。
「わああきれい!きれいだね、コーン!」
空を見上げてはしゃぐキョーコの手を離し、もう一歩の手に握られていた金魚の袋をさりげなく取り上げる。
空を指差してきゃあきゃあと喜ぶキョーコの姿に、久遠の口元もほころぶ。
(花火……きれいだな……)
先ほども見たけれど全く印象が違っているのは、ひとりじゃないから。
隣にキョーコがいるからだろう。
(花火、ちゃんと見ておきたい)
そう思った久遠はキョーコが花火に夢中になっているのを確認してから、そっとお面を後方にずらす。
色を変え形を変える火の花に、久遠は魅入ったのだった。


最後に一つ、ひときわ大輪の花を咲かせて。
花火は終了した。
残るのは暗い空に残るかすかな光の影と、風に流れてくる火薬のにおいのみ。
(終わった……)
静寂が戻ってくると同時に、遠くかすかに声が聞こえる。
(あれは……ひょっとして)
声は神社の方から聞こえてくる。目を閉じて耳を澄ますと、キョーコの名を呼んでいる。
(ショーちゃん、か……)
散々キョーコを待たせておいて、やっと現れたか。
そう思うと同時に、花火が終わってからでよかったとも思う。

「コーン?」
花火の余韻に浸っていたキョーコの視線が空からこちらに移っている。
どうやらキョーコの耳には、「ショーちゃん」の声は届いていなかったらしい。
久遠は後方にずらしていたお面を元の口元だけが見える位置に戻してキョーコに向き直り、金魚の袋を差し出した。
「コーン……どうかしたの?」
(王子様がようやっと登場したよ。俺は……ここまで。)
金魚を受け取ったキョーコの手を、久遠はきゅっと握る。
そして……

『ば い ば い』

声にはならない声。口の形でそれだけをキョーコに伝えると……
ぱっと手を離し、身をひるがえしてそのまましげみの中に飛び込んだ。
「コーン!!」
キョーコの声が聞こえたが、ふり返ることなくコーンはしげみをかき分けて進む。
そしてキョーコから少しばかり離れた位置でしゃがみこみ、身を隠す。

ほどなく、先ほどのキョーコを呼ぶ声が大きく聞こえてくるようになった。
「キョーコ!キョーコ!いねぇのか!」
「あ!ショーちゃん」
どうやらキョーコは「ショーちゃん」に会えたらしい。
久遠がほっと安堵したのもつかの間。
聞こえる会話から「ショーちゃん」がキョーコをないがしろにしていることが分かり久遠はいら立ちを覚える。
飛び出してキョーコを連れ去ってやろうか、とも一瞬考えたが、そうするのは流石にまずい。
久遠は2人の気配が離れるまでじっとそこで動かずに息をひそめて待っていた。

完全に2人の気配が離れたところで、久遠はしげみから出て神社の前へと移動する。
人の気配も、花火の余韻も何も残っておらず辺りに残るのは静寂のみ。

けれど久遠の手には確かなぬくもりが残っている。
久遠はぎゅっと手を握り締める。そこから、あたたかな何かが心の中にも広がっていくようだ。
1人でさみしかったはずのお祭りは、きらきらと輝く思い出となった。

父にどう報告しようかと考えながら神社の階段を下りる。
頭に乗せたままのお面を外した時、あの男の存在を思い出した。
「あのひと、誰だったんだろう……」

白い狐のお面の男。
彼のおかげでキョーコに会えた。
キョーコの涙を止めることができた。
「どうして、キョーコちゃんがあそこにいるって知ってて俺に言ったんだろう……」
久遠の呟きに答えるものはない。

ただ遠くから聞こえるのは、リズミカルな太鼓と、軽やかな笛。
その音は大きくなったり、小さくなったり。
遠くなったり、近くなったり。
闇夜に鳴り響いて、不思議の夜に溶けていく。



―― OMATSURI

   不思議の夜が来る

   迷い込んだのはだあれ?

   迷い込むのはいずこ?


   不思議の夜をくぐりぬけたその先に

   まっているのは

   ……な あ に?――
 


【END】
******************************

色々と小ネタをつっこんだらこんなことに……
最後は元歌・元話どこへやらーな出来になってしまいましたが。
自己満足!

結局迷い込んだのは誰なのか、どこに迷い込んだのかは適当に解釈してやってくださいませ。
みんなそれぞれどこかしらに足つっこんじゃったー、ってのが書き手の解釈です。
何とも適当。

だらだらと長い夏祭りにお付き合い、ありがとうございました。


素敵スキビサイト様への玄関口。
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完結:Omatsuri

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