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2014/10/26

Omatsuri~不思議の夜・松太郎~

Omatsuri~不思議の夜~の、松太郎バージョン。
蓮キョ絡みません。

自分が楽しいだけだってことはシッテルヨ……


※「Omatsuri」シリーズについて※
 ・一番最初にあたるお話は、企画参加作品「Omatsuri~不思議の夜~」
  まずはこれを読むのがおすすめ、というより読まねば他が分かりません。
 ・シリーズに含まれるのは「不思議の夜」の松太郎編、久遠(前後)編、
  「不思議の夜のその先に」はキョーコ編(記載はありません)、蓮編の
  全5話(6話)。
 ・「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」が完結編となります。
  (蓮編は、霜月さうら様からの頂き物です)
 ・その他のシリーズ作品は、どの順に読んでも問題はないはず。
  順番は最初と最後だけが大事なのです。
 ・ぶっちゃけ最短で読む!という方は……
  「Omatsuri~不思議の夜~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」
  だけで十分なのではないかと思います。
 ・けれどもやはり、完結編は全ての作品をお読み頂いてからの方が
  楽しんで頂けると思います。





(何でこいつとこなきゃいけないんだ)
青をベースにした幾何学模様の入った浴衣を着た松太郎の一歩先を行くのは、下駄の音を弾ませながら歩く赤をベースにした浴衣を着たキョーコ。
夜店の立ち並び、盛大な花火があげられる今夜の祭りは楽しみにしていたが、キョーコと2人で来ることになるとは思っていなかったのだ。

「ショーちゃん。金魚すくいしようよ!」
「あー?やりたきゃ勝手にやりゃあいいだろ」
「じゃあ、ちょっと待っててね」

(ったく、めんどうくせぇな……)
浴衣を着つけられて「キョーコちゃんと行っておいで」と言われた時に「げっ」と本音のこもった声が漏れたが、両親には逆らえず渋々キョーコと一緒にやってきたのだ。
しかし、どうにも退屈だ。ちっとも楽しめない。
楽しそうに金魚すくいをするキョーコをぼんやりと眺めながら、さてどうしたものかと松太郎が考え始めたその時……

「あーっ!ショー君だ!」
横からかけられた、黄色い声。視線を移すと、そこにいたのは同級生の女の子5人だった。
「よ」
軽く手をあげて挨拶すると、女の子たちが松太郎の周りに集まってくる。
「偶然だね、ショー君」
「ショーちゃん、浴衣、かっこいーーー!」
「すっごく似合ってるよ~」
松太郎を褒め、ちやほやする女の子たち。松太郎は自分が望んでいるのはこれだったんだとにんまり笑う。
「なぁ。お前ら、俺と一緒に回らねえ?」
松太郎が提案すると、女の子たちはキャーキャー騒ぎ始める。
「えええ!いいの?」
「ショー君、誰かと一緒に来たんじゃないの?」
女の子の1人は、ちらちらと金魚すくいをしているキョーコを見ている。
知っていたのか、と内心舌打ちしたショーだったが、にこりと笑う。
「まぁそうだけど。アイツといてもつまんねーし。何とかしてくるから、ちょっと待っててくれよ」
女の子たちに言い残し、松太郎は金魚すくいを終えたキョーコの元に歩いて行った。

「あっショーちゃん!お待たせ。結局うまくすくえなくって、おじさんに一匹もらったの」
キョーコが掲げて見せたビニルの袋の中には、赤い金魚が一匹、ひらひらと泳いでいる。
「よかったな」
「うんっ!」
満面の笑みを浮かべるキョーコに、ショーはにこりと笑ってみせる。
「なぁキョーコ。りんごあめ食いたがってたろ?あっちに店が出てたから、買ってこいよ」
キョーコは一瞬目を丸くしたが、すぐにまたぱあっと明るい顔をした。
「いいの?ショーちゃん」
「行って来いよ。いつもの神社で待ちあわせな」
行くつもりのない場所を告げたとは知らないキョーコは、大きく頷いて松太郎が示した方へりんごあめを求めて走って行った。
(へっ……ちょろい奴)
キョーコの後ろ姿を見送ったあと、松太郎は女の子たちのところに戻った。
「待たせて悪かったな。じゃ、いこーぜ」
「うん!」
先ほどキョーコが走って行った方とは逆方向へ、松太郎は女の子たちと一緒に歩いて行ったのだった。


「それでね、ショーちゃん」
「あー!さっきからあんた、ショー君にべたべたしすぎよー!」
女の子たちは松太郎が何をやっても喜ぶし、何をやってもほめたたえてくれる。
すっかり気分をよくしていた松太郎は、キョーコの存在を忘れていた。
盆踊り会場が見える土手に座り、おしゃべりを楽しんでいたのだが……

急に頭上が明るくなり、どぉん、と大きな音がする。

「わーーー花火、始まったぁ」
女の子たちが空を見上げ、きゃあきゃあと騒ぎ出す。
周りの人々も空を見上げている。踊る人々も、一時足を止めて空を眺める。

次々と上がる花火。
赤や青の細い光が空に昇っては、ぱあっと広がって消えていく。
松太郎もまた、女の子たちと一緒に花火を眺めていた。

ほどなくして、光と音が止む。
花火の中休みに入ったのだ。先ほどまで光と音に包まれていた会場に、ざわざわと人の声が戻ってくる。
「あーん。止まっちゃったー」
「あれー?何か暗くない?」
女の子たちの言うとおり、花火がよく見えるように照明の一部が消されていた。
「やだー。ちょっと怖くない?」
1人の女の子がショーの腕に絡みついてくる。
「あー!どさくさにまぎれてずるーい!こんなに人がいるんだから、こわいことなんてないでしょー?」
「えー!じゃあ、人のいない暗い場所ならいいってことー?」
(人のいない、暗い場所?)
女の子たちの黄色い声をどこか遠いものだと聞いていた松太郎は、急にキョーコの存在を思い出した。
(あいつ……確か暗いところで1人でいるの、嫌いだったよな……)

キョーコは長時間1人で過ごした後、いつもどこかおかしい。
笑っているはずなのに、その笑顔がぎこちない時がある。
「一人で過ごす」に「暗さ」が加わると、ぎこちなさはさらにアップする。
泣くことはしないが、ぎりぎり涙を押さえている、というときはよくあるのだ。

(くそっ……)
キョーコのぎこちない笑顔が脳裏に浮かび、松太郎は落ち着かなくなる。
「ショー君、さっきからボーっとしているけどどうしたの?」
女の子の1人が話しかけてくる。しかしその言葉松太郎の頭には響かず、頭にはキョーコが目に涙を貯めた姿が浮かぶ。
どこかでキョーコが泣いているかもしれない。
放っておけばいい、と思う傍ら、放っておけないとも思う。
(……キョーコのくせに!)
「ねぇ、どうしたの?」
「……悪いけど、俺、用事を思い出した」
「え?」
「じゃあな!」
「えええ!ちょっと!ショーちゃん!」
いてもたってもいられず、女の子に短い別れを告げると松太郎は駆け出した。
キョーコを探して。


「……いない……?」
キョーコに待ち合わせと指定した神社まで駆けて行ったのだが、そこはしいんと静まり返っていて人の気配がない。
聞こえるのは、はあはあと荒い自分の息遣いだけ。
「……くそっ!キョーコ、どこ行きやがったんだ!」
松太郎は踵を返し、祭り会場へと駆け戻る。

神社の階段を下りる途中で、また空が明るくなる。花火が再開されたのだ。
空が明るくなるのに少し遅れて、どおん、どおんと響く音。
光と音との饗宴に松太郎は目もくれず、ただ走り続けた。

立ち並ぶ屋台。
人の集まる休憩所。
盆踊り会場。
人通りから外れた土手。

松太郎は駆け回ってキョーコの姿を探すが、一向に見当たらない。
流石にくたびれて足を止めた時、ふと誰かが言っていたことを思いだした。

――お祭りはたくさん人が集まるけれどね。
  その賑わいに惹かれて、人じゃないものもたくさん集まってくるんだって――

(ひょっとしたら、キョーコはその「人じゃないもの」に連れて行かれたんじゃないか?)
松太郎はふとそんなことを思い、ぶるりと身震いした。
(そんなこと、あるわけないだろ!)
否定しながらも、不安が押し寄せてくる。
それと同時に、笛や太鼓の音、そしてざわめく人々の声すらもどこか遠い世界のもののように感じてしまい、松太郎はいてもたってもいられなくなり、がむしゃらに駆け出した。

(くそっ!くそっ!くそっ!)
道端の石に躓いて転びそうになりながら、時には人にぶつかりながら。
空で繰り広げられる光と音の饗宴も目に入らず、聞こえないまま。
松太郎はただひたすら、駆け抜けた。


気が付くと、元の神社に戻ってきていた。
はあはあと息を切らせてふらふらと境内に踏み入れる。
いつの間にか、花火は終わっていた。

「キョーコ……どこ行ったんだよ……」
呼吸が整ってからぽそりとつぶやくと、それは静かな境内に響き渡ったような気がした。
本当にキョーコが「何か」に連れ去られていたら……?
「キョーコ!キョーコ!!いねぇのか!」
不安でいっぱいになり、松太郎は大声で叫ぶ。
呼んだところでキョーコは出てこないか、と大きなため息をついたその時。

「ショーちゃん!」
脇のしげみから、キョーコが現れた。
一瞬、何かの間違いかと松太郎は眼をこすったが、嬉しそうにこちらにかけてくるのはキョーコで間違いない。
無事だったのかと安堵するものの、それを表に出すのははばかられた松太郎は、ぎゅっと眉間にしわを入れる。
「あぁ?キョーコ、そんなところにいやがったのか」

松太郎の口から出た言葉に、キョーコは首をすくめた。これもよくキョーコが見せる姿だ。
(連れてかれた、ってわけじゃなかったんだな)
「ったく。こんなところにいやがったのかよ。花火、おわっちまっただろ。とっとと帰るぞ」
気持ちとは逆の言葉をキョーコに投げつけて、松太郎は踵を返す。
「あっ!待ってよショーちゃん!」

ずかずかと歩き、ようやく祭り会場から離れたところで松太郎は振り返る。
一歩遅れて、キョーコがからからと下駄の音を立てながら追いかけてくる。
「早いよう、ショーちゃん」
追いついてから、はあはあと荒い息を整えるキョーコ。
いつものよくある光景だ。

「なあ、お前、花火見たか?」
松太郎の突然の質問に、キョーコはきょとんとしたが、一瞬目を空に泳がせた後に大きく頷いた。
「うん。神社で。とってもきれいだったよ」
「神社で?」
「うん。だってショーちゃん、神社で待ち合わせ、って言ってたでしょ?」

(俺が行った時にはキョーコは見当たらなかった……)
「いろんな花火があったよー。今年はリボンの形もあったし、かわいいのもいっぱい!」
きゃいきゃいとはしゃぐキョーコ。この様子だと、花火を最初から最後まで楽しんだに違いない。
暗いところで一人泣いていたわけではなかったと松太郎は安堵する。
「ショーちゃんも見たでしょ?」
しかし、キョーコの何気ない一言で、松太郎は我に返る。
自分は、花火など見ていなかったという事実に気が付いて。

(俺は……キョーコを探してて……)
花火のことなど、意識がいかなかった。

けれども……ふと、考えつく。
「人でないもの」に連れて行かれたと思って探していたキョーコは、しっかりと花火を見ていた。
それに比べて、自分は何一つ花火のことを覚えていない。
もしかして連れて行かれそうになっていたのは自分なのかもしれない、と。

「んなわけ、ねーだろっ!!」
「……どしたの?ショーちゃん?」
「なんでもねーよ!!」

ぶるりとひとつ身震いした後、松太郎はまたずかずかと歩きはじめる。
不思議の夜の、終わりのほうへ。


―― OMATSURI

   不思議の夜に迷い込んだのは

   だ あ れ ?――


【END】
******************************

なんだかんだ言いつつ、ショータローもキョーコさんを探し回っていたのよ、というお話。

お祭り話はあと1つ。
不思議の夜に迷い込んだ、彼のお話。



素敵スキビサイト様への玄関口。
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