2014/11/08

Omatsuri~不思議の夜のその先に~

Omatsuri~不思議の夜~の続編。
歌に出てくる大好きなフレーズがお話の中に入れられなかったので、そのリベンジ。

蓮キョ成立済み。
コーンバレもした後のおはなし。


※「Omatsuri」シリーズについて※
 ・一番最初にあたるお話は、企画参加作品「Omatsuri~不思議の夜~」
  まずはこれを読むのがおすすめ、というより読まねば他が分かりません。
 ・シリーズに含まれるのは「不思議の夜」の松太郎編、久遠(前後)編、
  「不思議の夜のその先に」はキョーコ編(記載はありません)、蓮編の
  全5話(6話)。
 ・「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」が完結編となります。
  (蓮編は、霜月さうら様からの頂き物です)
 ・その他のシリーズ作品は、どの順に読んでも問題はないはず。
  順番は最初と最後だけが大事なのです。
 ・ぶっちゃけ最短で読む!という方は……
  「Omatsuri~不思議の夜~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に~」
  「Omatsuri~不思議の夜のその先に・蓮~」
  だけで十分なのではないかと思います。
 ・けれどもやはり、完結編は全ての作品をお読み頂いてからの方が
  楽しんで頂けると思います。




「まさか、2人でお祭りに来られるなんて思ってもみませんでした」
「俺もだよ。社さんや社長、ミス・ウッズに感謝だね」

人ごみの中を寄り添って歩くのは蓮とキョーコ。
しかし今日の2人はしっかりと「変装」している。

黒地に細かい縦縞模様の浴衣をまとった蓮は、元の姿である金髪に碧い瞳の久遠の姿。
白地に牡丹の大輪が咲く浴衣をまとったキョーコは、髪はいつもより明るい色のウィッグを使ってアップにしている。
ミス・ウッズが「会心の出来!」と言い切ったこの2人を「敦賀蓮と京子」だと判断できる人物はいないだろう。
突如お祭り会場に現れた「金髪の長身の美形と、ちょっと派手な美女」のカップルとして、周囲の注目は浴びていたのだが。

「その浴衣、似合ってるね」
「ありがとう……ございます」
キョーコの浴衣は、蓮が選んだもの。
キョーコの頬に朱がさす。いつもより大人びたメイクを施された顔に、素のキョーコが垣間見えて蓮は目を細める。
「れ、蓮さんもかっこいいです、よ」
さらに上目づかいでそう告げられ、蓮の理性は崩壊しそうになる。
今すぐ人のいないところに連れ去って……というむくむくと湧いてくる邪な欲望を押さえこみ、蓮はキョーコと手をつなぐ。
「ありがとう。君の見立てがよかったんだね」
「いえ……」
蓮の浴衣は、キョーコが選んだもの。
「お互いに選んだ浴衣を着て、お祭りに行ってみたい」と話していたのを、蓮の優秀なマネージャーが聞いていたらしく。
そのささやかな願望はあっという間に愛が大好物の社長の耳に届き、普段から忙しい2人へのご褒美として今日の機会が与えられたのだった。


提灯の明かりに照らされた川辺の道には、様々な屋台が並ぶ。
射的、金魚すくい、りんごあめにわたあめ。
それぞれ好みの店を覗き、時には冷やかしながら2人は歩く。

キョーコはうさぎのぬいぐるみをかかえている。
それはさっき、蓮が射的の店で手に入れた景品だ。
キョーコは先ほどの店での光景を思い出し、ふふっと小さな笑いをもらした。
「それにしても……さすがですね、蓮さん。お店の方、商品を全部持っていかれるんじゃないかって真っ青になってましたよ?」
「あはは……あれはちょっとやりすぎだったかな」
立ち寄った射的の店で、蓮は優雅に鉄砲を構えたかと思うと。
瞬時に打ち出した弾を全て外すことなく命中させたのだ。
「ふふっ」
ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて笑うキョーコの手を蓮はぎゅっと握る。
「楽しそうだね」
「はい。小さいころにお祭りはよく行ったんですけど、最近は全く来られていませんでしたから」
「そうなんだ」
「はい。それにお祭りって何か不思議なことが起こりそうでわくわくしませんか?」

ぼんやりと淡い光に照らされる会場。
人々がたくさん行きかうメイン通りを少しでも外れれば、そこは闇の世界。
遠く近くに響く笛や太鼓の音も、日常と違った「異世界」を作り出すのだ。


ほどなく、2人は大きなやぐらが設置された盆踊り会場に到着する。
「ちょっと休憩しようか」
そう言って蓮が指差したのは、会場をぐるりと囲むように設置された簡易ベンチ。
ビール瓶の運搬用の黄色いコンテナを二つひっくり返した間に、木の板を渡しただけの即席の代物だった。

(あんな場所に「抱かれたい男No.1」が率先して座りに行くなんて……)
くすりと笑いをもらすキョーコを、蓮は不思議そうに見た。
「どうかした?」
「いえ?」

木の板にささくれや汚れがないか確認してから、蓮はキョーコを座らせる。
意外にも丈夫なそれは、キョーコが座っただけではびくともしなかった。
「飲みものを買ってくるから。ここで待っていて」
「はい」
蓮は足早に夜店が並ぶ通りに引き返していく。
キョーコはそれを蓮の姿が見えなくなるまで見送ったあと、盆踊りをしている人々に視線を移した。

笛や太鼓、奏でられる音楽に合わせてやぐらの周りで踊る人々。
老若男女様々な人が輪になって踊っている。

明かりから外れた少し暗い場所から明るい場所を眺めているのは少し目が疲れる気がして、キョーコが目を細めたその時。
とん、と腕に軽い衝撃が走る。
「?」

キョーコの前を赤い浴衣を着た少女が1人、盆踊り会場の方に向かって走っていく。
(ああ、あの子がぶつかったのね)
少し衝撃があっただけで痛みも何もない。よほど急いでいるのだなと、キョーコは少女のひらひら揺れる帯とぴょこぴょこと揺れるツインテールを見つめていた。
(あれ?)
少女をじっと見ていたはずなのに、気づけば少女は踊る人々の輪の内側にいた。
踊る人々は結構な人数で、ゆっくりとはいえ踊りながら円を描いて移動している。
少女が走っていたスピードでは、踊る人の輪をくぐりぬけて内側に移動するのは難しかったんじゃないのかな?とキョーコが不思議に思っていると。
踊る人の輪の隙間から、少女がきょろきょろとあたりを見回しているのが見えた。

(誰か、探しているのかな……?)
やぐらをうーんと見上げてみたり、右を見たり左を見たり。
せわしなく動く姿を見るうちに、キョーコは既視感を覚える。
(あれ……?)

少女のまとうトンボや花がちりばめられた赤い浴衣には見覚えがある。帯の色も、結び方にも覚えがある。
(あの浴衣……)
キョーコがじっと少女を見つめていると、少女が振り向いた。
(あれは……)

くるりと振り向いた少女は、キョーコのよく知る少女。
大きな瞳、耳の上でツインテールにした髪、そして覚えのある赤い浴衣姿。
振り向いた、浴衣の子ども。
(あれは、私……)

キョーコが茫然と少女を見つめていると、こちらを見ていた少女の表情が一変してぱあっと明るくなった。
その視線の先を追うと……
そこに立っていたのは、白い狐のお面を頭にひっかけた、浴衣を着た少年。
キョーコの位置からは顔が見えないが、祭りのオレンジの灯に照らされた金の髪がきらきらと輝いている。
(えっ?あの子は……!)
キョーコは目を見開いた。


「キョーコ、どうかした?」
声をかけられて、我に返る。
視線を上へと移せば、ストローが2本刺さったジュースのカップを持った蓮が心配そうにキョーコを覗き込んでいた。
「あ……蓮さん」
「ぼんやりしてたけど、どうかした?疲れちゃった?」
「いえ……今、あそこに」
キョーコは先ほど見つめていたあたりを指差そうとしたのだが……その手は止まってしまう。
(いない……)
「キョーコ?」
「あ、いえ。なんでもありません」
「そう?」
蓮はキョーコの隣に腰を下ろし、ジュースのカップを差し出した。
キョーコは一本のストローをとり、ジュースを飲む。蓮ももう一方のストローから、蓮もジュースを飲む。

ジュースを飲みながら、キョーコは先ほどの光景を思い浮かべる。
(あれは、やっぱり……)
一度ストローから口を離し、隣で目を閉じてジュースを飲む蓮を見つめる。

2人で飲むと、ジュースはあっという間に空になってしまった。
「じゃあ、行こうか」
蓮は立ち上がり、キョーコに手を差し出す。
(間違いないわ……)
キョーコは差し出された手を取って、立ち上がった。

「蓮さん、私、欲しいものがあるんです」
「ん?何?」
立ち上がってすぐの珍しいキョーコからのおねだりに蓮の頬は緩んだのだが……
「白い、狐のお面です」
キョーコの言葉に、すぐに無表情になって固まる。
キョーコはさらに、続ける。
「一度、お祭りの日にひとりぼっちになってしまったことがあるんです。さびしくて泣いてしまいそうになった時に現れて、一緒に花火を見てくれた子がいたんです。その子が白い狐のお面を身に着けていたんです。だから。」
蓮の目が大きく見開かれる。
それから優美な形の眉が下がり、ちょっと困ったような顔になった。
「やっぱり、蓮さんだったんですね」
「……覚えてたんだ」
「はい」


薄暗い道を手をつないで2人でゆっくりと歩く。
蓮の頭の横手には、ここに至るまでの店で見つけた白い狐のお面が付けられている。
「あの日……父と祭りに来たんだけど、父が急用で帰ってしまって。1人でぶらぶらしていてもつまらないから帰ろうとしたときにあの神社に行くようにある人に言われてね。半信半疑で行ってみたら、君がいたんだ」
「そう、だったんですね」
祭り会場から離れたここには、ほとんど人気はない。
それほど大きくはない声で話しながら、2人は歩いていく。

「私、あの時にやっぱりコーンは妖精だったんだ!って確信しちゃったんですよ」
「どうして?」
「お祭りはたくさん人が集まるけれど、その賑わいに惹かれて人じゃないものもたくさん集まってくるんだ、ってきいていたから。」
「妖精も集まってくるって思った?」
「はい。お祭りの夜に妖精の国への抜け道ができちゃったんじゃないか、って」
「キョーコらしいね」
くすくすと笑う蓮を、キョーコはもっていたウサギのぬいぐるみでぼすっと叩いた。
「もうっ……」
蓮の笑いは止まらない。キョーコは顔を赤くして、そっぽを向いた。

「でもね、蓮さん。やっぱりお祭りの日には、余所へとつながる抜け道ができるんですよ」
祭りの明かりが切れるころ、キョーコがぽそりと口にすると、蓮は足を止めた。
「どういうこと?」
「私、今日出会ったんです。あの日の私に。そして、あの日のあなたに」

幼い私は幸せそうに笑っていて、その先にはあなたがいた。

「ひょっとしたら、今の私たちも……抜け道を使って、どこか違う世界に行くのかもしれませんよ?」
キョーコがいたずらっぽく笑うと、蓮も笑った。
「そう、だね」


―― OMATSURI

   不思議の夜のその先には

   また新たな抜け道が
  
   あるのかもしれない――

【END】
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「OMATSURI」の中で一番好きなフレーズは、作中にも出ている「振り向いた~確か私」。
浴衣姿の子どもの頃の自分を見つける、という何とも不思議なエピソード。
どんな場面だろうと想像するだけでわくわくしたのであります。

完全に時期は過ぎておりますが。
あと少し、夏祭りは続きます。


素敵スキビサイト様への玄関口。
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