2014/07/23

No.1おまけ話の小話~策士のエプロン~

「No.1おまけ話 ~キョーコと蓮と、社~」のお揃いエプロンにコメント頂いたことによりホイホイされた小ネタを一投。


No.1おまけ話の小話~策士のエプロン~

「すみません敦賀さん、ハンガーをお借りしてもよろしいですか?」
蓮1人で「クー・ヒズリのハンバーグを作る」ことを目標にして練習を始めて何度めかの時。
ラブミーツナギ姿で蓮のマンションを訪れたキョーコが、おずおずと尋ねた。
「別にかまわないけど……どうしたの?」
「ちょっと今日はあわただしくて。制服を鞄に突っ込んだままになってるんです。しわになっちゃうと困るので……」
「え?最上さん、今日は一日現場じゃなかったの?」
「あ、はい。少し時間ができそうだったので学校に行ってから着替えて現場入りしたんです。終わってからは事務所でラブミー部の依頼を」
制服で学校に行き、私服で現場入り。その後ラブミーツナギで事務所で依頼をこなし、今に至ったキョーコ。
撮影が押したこともあり、時間に追われて制服のことまで構っていられなかったのだ。

「それは大変だったね」
蓮がハンガーを渡すと、キョーコはそれを受け取って制服をかけて整える。
「ああ、これはあっちに吊るしておくから。帰りに忘れないようにして」
蓮はきちんとかけられたキョーコの制服をさっととると、リビング奥のハンガーラックにかけた。
「ありがとうございます。あと、敦賀さん……着替えさせていただきたいのですが……」
「それなら、ゲストルームをどうぞ」
「ありがとうございます」
ぺこりとおじぎをしてゲストルームに入ったキョーコを見送ったあと、蓮はキョーコの制服に目を移す。
(さっき、私服で現場入りしたって言ってたよな……)

ぼんやりとしているうちに、キョーコがゲストルームから出てきた。
さっぱりとしたパンツスタイルに着替えたキョーコ。手にはエプロンを持っている。

「最上さん、ひょっとしてエプロンも持ってきた?」
「はい。お料理には必須ですから」
そういってさっとエプロンをつけたキョーコ。
「さぁ敦賀さん、今日の練習、始めましょう!」
にこりと微笑んで、蓮を促したのだった。


危うく失敗するところを、今日もキョーコに救われたハンバーグ。
それをきちんと胃袋に収め、片付けがすんだところでキョーコは荷物を持って立ち上がった。
「それじゃあ私、失礼しますね」
「あ、送るよ」
「大丈夫です。まだ電車もありますし」
「こんな時間に女の子1人で返せるわけがないだろう?」
「でも……」
「先輩の言うことが聞けない?」
う、と一瞬つまったキョーコの隙をついて、蓮はキョーコの鞄をひょいっと取り上げたのだが……予想外の重さに驚く。
「最上さん、この鞄ずいぶん重たくない?」
「あ……はい。今日は学校に行ったので教科書類と、着替えがたくさん入っていますので」

時間割にあった教科書とノートすべてに、英和辞典。
それに私服が2着とラブミーつなぎ、体操着にエプロンが入っているのだと報告するキョーコ。
とてもそれだけのものが収まっているとは思えないサイズの鞄を見て、蓮はため息をつく。
(こんな重いものを持ち歩いているなんて……これはやっぱり、俺の家に来るときくらいは荷物を減らせるようにしてあげないと……)
「あっ!敦賀さん!自分で持ちますから」
「最上さんはハンバーグの講師をしてくれて疲れているだろうから、せめて地下駐車場までは運ばせてもらうよ」
蓮はキョーコの意見を聞かず、さっさと駐車場に向かって歩き始める。キョーコは黙ってそれに従った。

「わざわざ送っていただいて、ありがとうございました」
車から降りたキョーコはきっちりとお辞儀をする。
「荷物、部屋まで運ばなくても大丈夫?」
「お気遣いありがとうございます。もう遅い時間ですから、敦賀さんは早く帰って休んでくださいね」
逆に気遣いの言葉をかけられた蓮は、食い下がったところでキョーコが譲らないのを知っている。それに、まだ「だるまや」があいている時間だ。
変装をしていない蓮が客に見つかろうものなら大騒ぎになる。キョーコにも店にも迷惑がかかるのは本意ではない蓮は、「それじゃあ、おやすみ」とキョーコに声をかけて車を発進させた。


帰宅し、シャワーを浴びながら蓮が考えたのは、キョーコの荷物のことだった。
(料理にエプロンが必要なら、ここに置いておけば1つでも荷物が減るのに……)
バスルームからリビングへと向かいながら、がしがしと頭の水滴をタオルでぬぐう。
(そうだ!いつものお礼としてプレゼントするのはどうだろう?)
蓮の都合に合わせてここに通って講師をしてくれるお礼というのはいい理由だ。しかし……
「……素直に受け取ってくれなさそうだよな……」

今、キョーコが蓮に指導してくれているのは「クー・ヒズリのハンバーグ」だ。
キョーコがクーに直接教えを乞い、さらに料理下手の蓮にうまく伝授する方法まで検討してもらったという。
クーは快く教えてくれたものの、蓮に教えた際の成果を報告するようにと条件を出したらしい。
つまりキョーコは、蓮の講師をする傍ら、その成果をクーに報告する義務もある。
真面目なキョーコのことだから「これは私の仕事の一環ですから、お礼なんて頂くわけにはいきません」と言うのは目に見えている。

何かいい方法はないかと髪に残った水分をぬぐいながらぐるりと見回したリビングの片隅に、TV局のロゴの入った紙袋を見つける。
数日前に有名料理番組のゲストとして出演した後に、記念にと貰ったものだ。
「確か……エプロン、って言ってたよな」
貰って持ち帰ったもののそのままになっていた紙袋を、蓮は取り上げて中身を確認する。
記念品としてもらったものならばキョーコも受け取ってくれるかもしれない。そんな期待を込めてビニル袋の中に入っていたエプロンを取り出したが……
「……どう見ても大きい、よな……」
広げてみると蓮が着ければ少し小さいと感じる程度。キョーコが着けるにしては明らかに大きいサイズのエプロンだった。
「男性用だな、これは……」
あわよくば、と思ったのだがどうもうまくいかないらしい。蓮はため息をついてエプロンを紙袋に戻したのだが……
「待てよ……」

エプロンの入った紙袋を見つめて考えることしばし。
蓮はくるりと体の向きを変え、携帯を手に取り電話をかける。相手は松島だ。
「夜分遅くにすみません。松島さん、少しお願いがあるんですが……」


それから数日後……
「最上さん。これ、よかったら使ってくれないかな?」
蓮が差し出したのはTV局のロゴの入った紙袋。キョーコは首をかしげた。
「何ですか?」
キョーコは蓮から紙袋を受け取り、中身を取り出す。入っていたのは、料理番組のロゴが入ったエプロンだ。
「これ……?」
「この間出演した番組の記念品で申し訳ないんだけど」
「あ、いえ。でも記念だったら敦賀さんが……」
キョーコはエプロンを返そうとするが、蓮はやんわりとそれを押さえる。
「うん、でもそれ、女性用なんだ」
「へ……?」
「俺が使いたくても、サイズが合わないんだ。だから最上さんが使って?」
蓮からの返事はキョーコにとっては予想外だった。一瞬視線をさまよわせた後、キョーコは紙袋を握り締める。
「ですが……私などが敦賀さんから番組の記念品を頂いたと周りに知られるのは、あまりよくないと思うんですけど……」
「そうかな?」
「そうだと思います!」
キョーコはずいっと紙袋を押し返す。蓮はそれを一度は受け取るが、またすぐにキョーコに渡した。
「それなら、このエプロンは最上さんに貸し出す、っていうのはどうかな」
「ええ?」
「この家に置いておいて、必要な時に使う。そうしたら別に俺が君にあげるわけではないし、君もここに来る時にエプロンを持って来る手間が省けると思うんだけど?」
「それは……そうかもしれないですが」
「俺の周りで一番エプロンを活用してくれそうなのは最上さんだと思うんだけど」
蓮はふぅっ、と溜息をつく。
「最上さんに使ってもらえないんだったら……これは箪笥の肥やしかゴミ箱行きかな……」
「ご、ゴミ箱行き?」

有名料理番組のロゴの入ったエプロンは、視聴者プレゼントで人気の品だ。
出演者や関係者なら手にすることがあるだろうが、視聴者には中々手に入らない一品だ。
キョーコすら知っている番組の、有名な品物。それがゴミ箱行きと聞いて、キョーコは青ざめる。

「わ、分かりました敦賀さん!ありがたく使わせて頂きます!」
「そう?それは嬉しいな。あ、洗濯はこちらに任せてくれたらいいからね」
「は!はいっ!」
こうして蓮は、キョーコにエプロンをプレゼントするには至らなかったが、使わせることに成功したのだった。


そしてその次の練習の時には……
「俺もエプロンを着けた方がいいかなと思ったんだけど、あいにく今はこれしかなくて」
と嘘吐き紳士スマイルで料理番組のロゴの入った男性用エプロンを持ち出した蓮は、キョーコとお揃いのエプロンを身に着けて仲良く練習に励むことになったのだった。

【END】
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のちにキョコさんも蓮さんにエプロンをプレゼントする話も書きたい。


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