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2014/06/06

No.1おまけ話 ~初練習 その2(完)~

「No.1をめざせ」おまけシリーズ。
練習一回目の続き。


No.1おまけ話 ~初練習 その2(完)~

「何とかできあがりましたね」
「うん」
鍋の中には、おいしそうに出来上がったハンバーグソース。
少し前に入っていた得体のしれない物体からは一転して食欲をそそる芳香を放つそれは、クー・ヒズリのレシピをキョーコの完全な監督のもとで再現したものだ。

「こうしてきちんと手順を確認すれば敦賀さんにだってちゃんと作れるのに……」
出来上がったソースを、ソースポットに取りながらキョーコはため息をつく。
それに対して、蓮は返す言葉がない。
「どうしてああなっちゃうんでしょう……」
キョーコがちらりと見たのは、先ほどのソースを処分したごみ箱だ。
蓮は「才能と遺伝の問題かもしれない」と言いたいところだったが、ぐっと飲み込んでため息をついた。

そのため息がキョーコの耳にも届き、キョーコは焦り始める。
「あ、あの敦賀さん!すみません失礼なことを言いまして……人間、何事も得手不得手というもがありますし、私ごときのぺーぺーが敦賀さんのことを悪く言うなどと……」
キョーコは勢いよく頭を下げようとするが、蓮が肩を掴んでそれを止めさせる。
「ストップ最上さん。ここでお辞儀したら、調理台でおもいっきりおでこをぶつけることになるよ?」
「あ……はいすみませ」
「だからダメだって!」
礼儀正しさと美しいお辞儀は最早身についた所作であり、修正するのは難しいのだろうが、やはり場所を考えてほしい。
怪我でもされたら、と蓮はまたため息をついた。
「最上さんが謝ることはひとつもないよ。むしろ、俺ができないからこうして最上さんに練習に付き合ってもらっているわけだから」
穏やかな声音で蓮が語りかけると、ようやくキョーコが顔を上げた。
「はい……」
「それじゃあ、この話はおしまい。ソースもできたことだし、冷めないうちに食べよう?」
ハンバーグと付け合せは冷めちゃったけどね、と蓮が苦笑すると、「温めれば問題ありません」とキョーコは笑って返した。


「おいしいです、敦賀さん」
リビングのローテーブルに料理を運び、2人向かい合って座る。
キョーコはハンバーグを一口ほおばると、すぐに蓮に向かって笑いかけた。
一度冷めたものを温めた分味は落ちてしまっているのかもしれないが、キョーコ監修の元で蓮が作ったハンバーグは、「No.1をめざせ」中にクー・ヒズリがふるまったものと遜色ないものに仕上がっていた。
「うん、ありがとう。あ、でもハンバーグに目玉焼きを付けるの忘れちゃったね。最上さんの大好物なのに」
「ん、もうっ!敦賀さんってば!」
くすくす笑って蓮が言うと、キョーコは頬を染めてそっぽを向いた。
そのしぐさがかわいくて、蓮はまたくすくすと笑ってしまう。
キョーコはさらに顔を赤くして、そっぽを向いたままハンバーグを次々に運ぶことになってしまった。


「ちゃんとおいしくできても……やっぱりちゃんと報告しないとダメですよね……」
「え?」
これ以上機嫌を損ねてはいけないと思いあえて蓮が声をかけなかったために、2人はしばらく無言で食事を続けていたのだが。
突然、キョーコはナイフとフォークを置き、つぶやいた。
その表情は少し険しい。
「何を報告するの?」
蓮もまた、ナイフとフォークを置いて尋ねる。するとキョーコは少し言いづらそうに話を始めた。

「実は……せ…いえ、とうさんにレシピを教わった時、料理が得意でない敦賀さんにレクチャーする方法も一緒に考えていただきまして。その代償、というわけではないのですが、敦賀さんが料理をしたときの様子を報告してほしい、と言われているんです」
クー曰く。「キョーコと一緒に、料理音痴の敦賀君にレクチャーする時の対策も考えたんだ。それを実行した結果をぜひ知りたい」とのこと。
レシピを伝授してもらっただけに、キョーコもそのクーの要求を断るわけにはいかなかったのだ。
もちろん、クーからすれば「息子の様子を知る」という第一目的があるのだが、そんなことはキョーコの知るところではない。

「結果としてはおいしく出来上がりましたが……途中ソースを失敗していますし、やはりそのことはとうさんに報告しないといけませんよね……」
「そう、だね……」
隠したところで何の利もない。
それどころか、虚偽の報告がばれたときの方が恐ろしいというのは、蓮も幼いころ身を以て知っていることだ。
特に右手から繰り出されるでこピンは最高の破壊力を持つ。今でもあの構えを見ると、反射的に額を隠してしまうほど蓮にとっては恐ろしいものだ。
キョーコをあんな目に遭わせるのは、と蓮は心の中で苦笑する。実際はすでにキョーコは何度かクーのでこピンをくらっているのだが、蓮はそれを知らない。
「俺が失敗したことは事実だし、ありのままを報告してくれるといいよ」
「はい……でも」
「でも?」
「いつかはとうさんに、敦賀さんが1人でおいしい料理を作って私にふるまってくれました!って報告がしたいです」
できれば早いうちに、と付け足されて、蓮は苦笑い。
「なるべくそうできるように頑張るよ」
約束ができるという自信は全くない。蓮はそう返すのが精いっぱいだった。

「ところで、最上さん」
「はい?」
「役に入らなくても、あの人のことは「とうさん」って呼んでるんだね」
「あ……」
蓮に指摘され、キョーコはぱふりと両手で口をふさぐ。
「すみません、私ごときがハリウッドの大スターをとうさんなどと……」
「待って!謝ることじゃないだろう、それも」
「はあ……でも……」
「クー・ヒズリに言われたんじゃないのかな?とうさん、って呼ぶようにって」
蓮の言葉に、キョーコは目を丸くする。図星を指したことは一目瞭然だ。
「図星、だね」
「どうして……分かったんですか?」

そりゃあ親子だからね、とは言えない蓮は「社長から聞いたんだよ」と誤魔化す。
するとキョーコは安心したように笑ってクーとやりとりを話し始める。
「私は先生とお呼びするつもりだったのですが……クオン少年を演じた後、とうさんと呼ぶようにと仰ってくださって」
「へぇ……」
クオン少年を演じたときのことを含めクーとのやり取りを楽しそうに話すキョーコを、蓮は相槌を打ちながら目を細めて微笑みながら聞いていた。
はたから見れば、キョーコがいとおしくてたまらないというのがダダ漏れの表情であったが、夢中で話すキョーコはそれに気づくことはなく、また指摘する第三者もそこにはいなかった。
うっかりと先生と呼んでしまった時には、でこピンをされそうになるという話が出たときにはすでにキョーコも被害に遭っていたかと内心頭を抱えたのだったが。

「最上さんは……」
キョーコの話が一通りすむのをまって、蓮は話しかける。
「はい?」
「クー・ヒズリを「とうさん」って呼ぶことには抵抗はない?」
蓮が尋ねると、キョーコの顔にさっと朱がさす。
「抵抗……はなくもないですが……その」
「何?」
「本当のとうさんだったらいいのに、とは思います」
頬を染めて恥ずかしそうに言うキョーコ。きっとそれは本心なのだろう。
蓮の顔は自然と緩んでいく。

「そう、それなら……最上さんが本当にそう呼べるようになるように、俺も努力するよ」
「え?敦賀さんがですか?」
「うん」
どうして敦賀さんが努力するんですか?と心底不思議そうに首をかしげるキョーコを見て、蓮は柔らかく笑う。

”君が俺の人生の伴侶になってくれるように、ね”
言いたいけれどまだ言えない言葉は飲み込んで。

【END】

******************************

No.1のおまけシリーズはどうにも着地点が予定していたところと違う気がする。

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