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2014/04/27

秘密の宝物。

ザ花番外のちょっとあとくらいの設定。
ひつじ枕の破壊力は半端なかった!!



秘密の宝物。

「今の時間なら、キョーコちゃんはラブミー部の部室にいるみたいだよ」
松島主任とのスケジュール確認のためにLME事務所に戻る車中、社さんからもたらされた情報。
「スケジュールの確認くらいなら、俺だけでも大丈夫だから。お前、キョーコちゃんに会いに行って来いよ。アレによる効果のお礼もかねて、さ」
そういって社さんは後部座席の荷物をちらりと見る。
俺が「無人島に持っていくとしたら」と質問されて答えた三つ目のアイテムが入った鞄。

「キョーコちゃん、アレを表に出したことによって敦賀さんのイメージが崩れるんじゃ、って心配してたからね」
「それは前会った時に心配ないと言ったはずですけど?」
「それはそうだけどさ。それからあと、お前宛にラブリーな羊グッズが山盛り送られてきてることも教えてやれよ~。それだけ反響がでかかった、ってね」
「あはは……」
そんなことを言ったら、「私めがあのような敦賀さんに不釣り合いな形状のものを献上したばかりにご迷惑を!」と、床に這いつくばる勢いで土下座して謝られる気がする……
安易にその図が想像できて、俺は苦笑する。

「ま、とにかくお前はラブミー部に行って来いよ!打ち合わせはまかせとけ!」
運転中にも関わらず、社さんにバンバンと背中をたたかれて。
俺は「そうします」と答えるしかなかった。


LMEに到着してすぐに社さんと別れる。
ラブミー部の部室は、つい先日行ったばかりだ。
あの時は誰もいなかったから、あの枕を使ってつい転寝をしてしまったんだっけ。
そのあとに社さんと最上さんがそろってやってきて……
「インタビューの回答に出すなんて!先に言ってください!」って、最上さんに怒られたんだっけ。
ぷりぷり怒る最上さんの姿を思い出して緩みそうになる顔を引き締めながらラブミー部の部室へと向かう。

トントントン、とドアをノックするが返事がない。
もう一度ノックしてみるが、やはり反応はない。
社さんの情報はきっと間違っていない。そうなると、急な依頼が入ったか……
そう思いながら、ドアノブに手をかけるとノブが簡単にくるりと回る。
鍵がかかってないのなら、すぐに戻るということかもしれない。俺はそっとドアを開けた。
すると……

ドアの正面にあたる窓際に置かれたソファ。俺が先日転寝していたそこに寝転ぶ最上さんの姿が見えた。

「最上さん……?」
そっと近づいて声をかけてみるけれど、反応がない。

靴を脱いでソファの上で丸くなっている最上さん。
(眠ってる……)

枕代わりに使っているのは、いつも持ち歩いている鞄。
眠っている表情は穏やかで、すうすうと心地よさそうな寝息を立てている。
ラブミー部で掃除の依頼でも受けたのだろうか。ピンクのつなぎにはあちこち黒い汚れがついており、髪の毛には綿埃が付いているのに気が付く。
きっと全力で仕事をして、疲れたのだろう。
(全く、この子は……)
俺はそっと髪の綿埃を取る。すると、その気配に気づいたのかもぞりと最上さんが動く。

(まずいな……起こしたか?)
そっと様子を伺ったが、起きる気配はなさそうなので安堵の息を吐く。
それにしても……

(可愛いな……)
代マネをしてもらった時や「DARK MOON」撮影中に膝枕をしてもらった時。最上さんの寝顔を見るのは初めてではないけれど、あの時よりはるかに気持ちが育ってしまっているらしく、この寝顔を自分のものだけにしたいと思ってしまう。
(それは……叶わない、な……)

けれどふと思いつき、ポケットに入れていた携帯電話を取り出す。
(叶わないから、せめて)
これまでほとんど使ったことがない、カメラを起動する。
そしてフレーム内に眠る最上さんを収めて、シャッターボタンを押す。
すると……

ピコーン!

予想外に大きな電子音が、部室内に鳴り響く。
そうか!携帯の写真機能って犯罪防止の意味もあってシャッター音が鳴るんだった!
というかこれ、盗撮じゃないか!

我にかえったところで、最上さんに気付かれてしまったらどう言い訳をしようか頭を巡らせる。
社さんがこちらに来るとメールをくれたことにしようか……

けれど俺の心配は杞憂に終わり、最上さんは気づかずにすうすうと眠っている。
俺は最上さんから離れて近くのパイプ椅子を引いて、座る。
最上さんが起きる気配はない。
俺はそれを確認してから、携帯を操作して先ほどの写真を表示させる。

画面いっぱいに映る、最上さんの寝顔。
(うん、可愛い……)

盗撮は犯罪だ!と言われそうだけれど。
これを削除するなんて、俺にはできそうにない。

この写真は、俺の宝物。
秘密の、宝物。

【END】
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